幸せジャンクション ─キャンピングカーが運んだ小さな奇跡 / 香住泰


主人公の勤める運送会社が突然倒産した。社長のはからいで、今月分の給料と退職金がわりに社長は、社員たちに会社のトラックを引き渡す段取りをする。配車係だった主人公はトラックをもらっても、有効に活用できない。そんな主人公は、社長が大事にしていたキャンピングカーを譲り受ける。持ち帰る最中、豪雨のため偶然乗せる事になった老婦人と介護士。トイレ付きの車が気に入った老婦人に依頼され、旅に出ることになる。

老婦人の依頼を成し遂げすぐに帰ろうとするが、様々な出会いもありキャンピングカーの旅は3泊4日続きます。

老婦人のあとは、妻と娘に先立たれ孫と大型犬を、離れた息子の家に送る、近々手術予定の老紳士。通りかかったバス停で、産気付いた妊婦がキャンピングカーの中で出産したり、自分の車を盗もうとした若者を目的地まで届けたり、次から次へといろんなことが起こります。

「旅」というより「出会い」と「人助け」の偶然というか、もちろんフィクションなので、次から次へとうまくいくんですが、「偶然出会う人々」がみんな幸せになれるような、とても心あたたまる物語でございました。

誰もが経験したことがあるだろう人助け。うまくいった時の充実感や感謝の言葉。困っている人には是非、手を差し伸べてあげよう。そんなことを思わせてくれる1冊でありました。

老後の夢はキャンピングカーで旅をするのが夢。そのように言う人がいる。そんな人にはたまらない、そして「夢」の実現に向けて、日常に元気をもらえることでしょう。

17 th in September / 260 th in 2023