「美食地質学」 入門~和食と日本列島の素敵な関係 / 巽好幸_2th


 2024年、元旦から発生した「令和6年能登半島地震」この報道を見て思い出した本があった。『美食地質学 入門~和食と日本列島の素敵な関係  / 巽好幸』本の帯には「マグマ学者が紐解く、その恵みと試練 / なぜこれほど多彩なのか」とある。

 本書で富山湾について触れているのを思い出したので再読してみました。富山湾は島国日本にあっても特異な存在。なんとその深さが1000m以上にも達する。伊豆半島が本州へと突き刺さったことで、プレートが沈み込むために深海に凹地をなす南海トラフ(海溝)が陸域近くに入り込む相模湾、駿河湾とともに、日本三深海湾といわれている。

 しかし、プレート境界をなす海溝は富山湾には存在しない。その代わりにこの湾内には、かつてアジア大陸を分裂させて日本海を生み出した大事件の痕跡である「断裂帯」が残っている。石川県の日本海に「活断層」がたくさんあると触れている報道はあるが、「断裂帯」について触れている報道は見た覚えが無い。

 この得意な地形により自然より恩恵を受けることがある。この断裂帯の延長である富山湾の海底にある海底谷に群れをなすのがシロエビ。体長は約6㎝と小粒だが甘味と旨味は格別で、水揚げ直後は、透明感のある淡いピンク色をしていることから「富山湾の宝石」と称される。

 また深海魚特有のプルプルのゼラチン質が特徴のゲンゲも名物。そして、なんといっても富山湾の名を全国に知らしめているのは、同じく深海系の「ホタルイカ」

 白エビが発見されたのは、明治の初めごろだという。タラ漁に出た漁師が誤って網を深いところに落としてしまい、その網を引き揚げたときに、白エビが引っ掛かっていたことから偶然発見されたという。

 もしもその漁師が網を落としていなかったとしたら、白エビはまだ発見されていなかったかもしれない。 私たちはそんな奇跡的な出来事によって白エビと出会えた。こうして発見された白エビは、次第に富山県民にとって欠かせない食材となっていく。

 「令和6年能登半島地震」と「白エビ」を繋げるネタではありますが、私の住む三陸海岸もそうですが、自然の過酷な条件から恩恵を受ける分、リスクも比例して大きくなるという事実。そして「津波」=「太平洋プレート」と潜在意識にある自分も含めた東北太平洋側の人たちの認識の薄さ。

 その遠い昔、中国大陸から離れて移動するとき「出来た断裂帯というヒビ」が能登半島の沖にある。それに引っ張られて富山湾はありえないくらい深い。そんな事実を改めて考えることが出来たことは「令和6年能登半島地震」を語る上でももっと報道されても良いのでは無いか。そんなことを思わせてくれる本書でありました。

01 th in January / 01 th in 2024