信仰 / 村田沙耶香


 著者の作品は芥川賞受賞作の「コンビニ人間」を読んだことがありますが、本書は短篇&エッセイという構成になっています。エッセイに関しては現実味が、もちろんありますが、その他の短編は物語がどうのこうのと言う前に、著者の発想力の凄さをとても感じさせてくれる内容でありました。「コンビニ人間」も読んだとき、著者の凄さをとても感じましたが、それをはるか上を行く奇抜さと言うか、奇抜さを抑えたがゆえ「コンビニ人間」はヒットしたのでは無いかという、そんな印象です。

◆信仰

 同級生から新しくカルトを始めようと誘われる物語。騙される人間に対し、絶対的な自信を持っていた主人公が、ダマサれたいからという理由で、のめり込んで行く物語。

◆生存

 人生はすべて「生存率」という社会。ランク付けで人生が決まる。物語の世界では、温暖化が進み、生物も植物もロクに行きては行けない社会。ゲリラ豪雨がしょっちゅう降るが、そこはプライバシーが守られる世界で、屋外のあちらこちらでセックスする男女がいる。生存率の低い人間は生きたければ、人間を捨てて野人になる。主人公の姉が「野人」になっていく様子や、家族の葛藤が綴られています。

◆カルチャーショック

「均一」に暮らす僕。父に連れられて行く「カルチャーショック」という地。ホテルを抜け出した僕は、奇妙な老婆に路上で会うが、ことばが通じない。そして老婆がくれた変な食べものに「ショック」を受ける。それには、味と匂いがあったから。

◆書かなかった小説

主人公は秋葉原のヨドバシカメラで自分のクローンを4体購入する。購入理由は「ルンバと同じくらい便利だから」宅急便で届いたクローンを風呂で湯につけて戻し、戻した順番で、夏子Aから夏子Dと名付ける。家事や出産をさせることを目的として買った彼女たちと5人の共同生活。

他にも短編はありましたが、この4つがとても印象的でありました。やはり、小説家。そしてヒットメーカーカーは、スゲぇ〜!! それが本書を読んだ率直な感想です。笑

17 th in December / 321 th in 2023