『週刊ファイト』とUWF 大阪発・奇跡の専門誌が追った「Uの実像」/ 波々伯部哲也


 週間ファイト編集部に在職していたという著者。思い入れをもって追いかけた UWF。前田日明、佐山聡、藤原喜明、高田伸彦、船木誠勝 ら往年のU戦士 たち。第一次、新日プロUターン、第二次、そして崩壊。激動やその時々の各人の葛藤が綴られています。

 週刊ファイト記者という、薄給・休日返上の今でいうブラック企業と言えるような働きぶり。それに比例するプロレスに対する情熱。その矛先は主にUWFを主軸に展開していきます。

 私は知りませんでしたが、人生をすべてプロレスに捧げた編集者がいた。「I編集長」本書の中では、著者の「I編集長」に対する尊敬と様々なエピソードが紹介されています。こんな人がいたからこそ、プロレスという文化が深く後世に語り継がれるものになったのではないか。そんなことまで感じさせてくれました。

「#I編集長」は アントニオ猪木 を徹底的に観察、崇拝して週刊ファイトを成長させた。それと同様、著者は前田、髙田たち、UWF勢を観察していき、プロレスの世界に没頭していく。新日クーデターからはじまり、第1次UW F誕生の時期と著者の入社がほぼ同じ時期だったので、UWFの人気沸騰と同時に始まった記者生活だからこそ、その分感じ取れる「U」の勢いとイザコザ加減がとても感じ取れる内容でございました。

 UWF勢の苦悩と成長する姿はもちろん、その中で起きる様々なエピソード。そんな結末は分裂する。その詳細についてとても知ることができる本書でありました。

 本書では、様々なキーマンの印象的な言葉を紹介しています。

 佐山さんと 対立してたころの 前田さんが好きでした。 殺し合いじゃない、 ギリギリの闘いだと 言ってる前田さんとは 同じ考えだなとか思って。 今は #前田さんがいないほうがいいんじゃないか と・・・by 船木誠勝

 私はUWFが絶頂の頃、熱狂的に見ていたわけではない。しかし様々な本を読んでこの激動の時代をとても体感をその辺の人よりは、出来ているつもりです。笑 新日から飛び出した反逆者たちが、分裂する様子が、船木のこの言葉にとても現れているのではないか。そんなことを思う。

 私の身の回りでも、この「U熱狂時代」を支持する人は多い。私はあまり熱狂はしていなかったが、そんな人達の気持ちがとてもわかる本書でありました。笑

15 th in November / 301 th in 2023