スタート! / 中山七里


他の本を読みながら、たまに読む。そんな読み方をしたので、全体像がさっぱりぼやけていたので、あらすじはWikipediaから拝借です。笑

くだらないバラエティ番組の仕事ばかりやらされるテレビ局に別れを告げ、映画の世界に飛び込んで5年。曲がりなりにも助監督として映画の制作に関われてはいたが、宮藤映一は虚しさを感じていた。この世界をめざすことになったきっかけとなった映画界の巨匠・大森宗俊の下で寝る暇も惜しんで映画作りに励んでいたあのころの情熱は一体どこへ行ってしまったのか?

惰性で仕事をし続ける自分にも嫌気がさしていたころ、映一にとって願ってもない話が舞い込んでくる。3年ぶりに大森宗俊が新作を撮ることが決定し、そのスタッフとして映一にもお呼びがかかったのだ。意気揚々と大森の自宅で行われるオールスタッフ(スタッフ編成の他、キャスティングや撮影スケジュール作成、今後の大まかな計画表を作るミーティング)に駆け付けたが、すでに問題は山積み。製作費をたてに無理やりプロデューサーに名を連ねる帝都テレビの連中、そしてそのコネで押し上げられたスキャンダルまみれの女優。おまけに去年肺炎で入院していた大森は痩せこけており、体調が万全というわけではないらしい。そのうえ撮ろうとしている映画の原作は、猟奇場面と暴力描写もさることながら、刑法39条や精神障害も扱う作品で、関係者の間では映像化は困難とされていたものであった。しかし大森が決めたのなら、迷うことはない。映一もこの映画に全力を注ぐことを決意する。

しかし実際に撮影が開始されてからも、トラブルは続出する。撮影スタジオのスポットライトが突然落下し、プロデューサーの曽根が全治2か月の大怪我をしたのを発端に、台本の最終稿がネットに流出したり、作品の内容が精神障碍者を不当に扱っていると弁護士が抗議に来たり、セットの一部が本物とすりかえられてヒロインの女優が怪我をしたり…。予算の枯渇で脚本変更とシーンの大幅カット、そしてついには殺人まで。監督も吐血して倒れてしまった今、この作品は本当に無事に完成するのか? そしてこの様々なトラブルは一体誰の仕業なのか?

ミステリーは少し入っていますが、あくまでも付録程度です。それより映画制作に関わる、熱意と裏側をとても知ることが出来ました。関係者がみんなで、情熱を込めて作り上げる映画の制作過程や役割分担など。さらに「制作委員会方式」の問題点など、今まで気にも留めなかったようなことに、少し興味を持つことが出来ました。

様々な本を読むと、自分の知らなかった世界に対して、好奇心が湧くときがあります。私は人から「読書で何がいいか」と、人に聞かれたとき「カラーパス効果」といいます。

カラーバス効果とは、ある一つのことを意識することで、それに関する情報が無意識に自分の手元にたくさん集まるようになる現象のこと。 カラーバスは「color(色)」を「bath(浴びる)」、つまり色の認知に由来するが、色に限らず、言葉やイメージ、モノなど、意識するあらゆる事象に対して起きる。

映画はテレビで見る程度で、特に興味はありませんでしたが、本書を読んで「撮影現場の裏側」はどのようになっているのか。そんな新しい好奇心や探究心を抱かせてくれる、そんな内容でありました。

12 th in September / 255 th in 2023