寝ながら学べる構造主義 / 内田樹


 時代により善悪などの判断や常識が変わるという事実は、現在の「平常」といっていいだろう。多くの人が見る風景により、反対の人が見る景色と全く違うものが主流となりそれが「常識」になることもある。

 現在はある政策に賛同することが出来ても、反対意見に視点を向けることが必要とは思いつつ、どちらの話も事実と誤りだという、そんな主張が「常識」となっていることもある。

 構造主義という聞き慣れない言葉を使っていますが、自分の考えは自分のフィルターを通した考えでしか無く、自分の中ででは無く、自分の外にある、外的要因により結構な割合で支配されているのでは無いか。そんなことを考えさせられる。

 自分は環境のノリに乗っ取られている。

 会社のノリ、育った家族のノリ、地元のノリ……自分にとってとくに支配的なノリもあるでしょう。たとえば、中学時代の仲間内のノリが何をするのでもベースになっていて、その延長線上にいまの仕事のやり方もある、というような。 たいていは、環境のノリと自分の癒着は、なんとなくそれを生きてしまっている状態であって、分析的には意識されていない。

 では、どうやって自由になることができるのか。自分のおかれた環境から完全に抜け出すことはできないなら、完全な自由は得ることが出来ない。ならば、どうしたらいいのか。

 環境に属していながら同時に、そこに「距離をとる」ことができるような方法を考える必要があるという。そして著者いわく、「距離をとる術が言語」だという。

 自分は「他者によって構築されたもの」であるという著者。アドラーの本でこんなことを読んだ覚えがある。「すべての悩みは対人関係の悩みである」

 寝ながら学べるという、そんなお気軽な感じで本書を手に取りましたが、とても深い学びを感じ取れる本書でありました。

08 th in December / 312 th in 2023