人生は苦である、でも死んではいけない / 岸見一郎


 自己啓発書のモンスター。「嫌われる勇気」の著者が送る、人生とはなにか。そして「死」についてとても考えさせてくれる本書です。

 人生は苦しい。苦しいこともあれば、楽しいこともある、ではなく、本来的に人生とは苦しいものだという。それゆえ仏教は「生老病死」の苦しみを説き、聖書は人生を嘆きの谷になぞらえる。

 しかし事実を認め、受け入れた上で生きていこう。いじめられている人も、会社でハラスメントを受けている人も、死んでしまうのではなく、とにかく生きよう。

 どんなに孤独に思えても、かならずどこかに「仲間」はいる。だから絶望することなく、希望を持って生きてゆこう。人生を「生きる」ことが、この世に生を受けたすべての人に課された課題だという。

 「死は忘れてもいい」という章がある。現在生きている人間は死を知らない。知らないのに何故おそれるのか。自分でコントロール出来ないものに対し、人間は恐怖を抱くのだという。

 飛行機より、自分の運転する車の方が安全だと思いこんでいる。実際は確率・統計的に飛行機の方が安全なのに。では、自分で死をコントロールすれば、恐怖がなくなるかといえばそうでもない。

 少なくとも自分でコントロールした「死」や、自分の責任で訪れた自分以外の「死」に関しては、身の回りの悲しさに関して、自然に訪れる「死」より、何十倍もあるという。

 本の題名から推測するに、自殺を思い留めるために発刊された本書であるのかも知れませんが、とても自分の人生について考えさせてくれました。

 著者が心臓を患い、入院して手術し回復していく過程で、担当医にこういわれたという。「本は書けるなら書いた方がいい。本は残るから」その言葉を聞いて、本は残るが自分はいつかこの世から消えると実感出来たという。

 私もなにか書いて残したい。そんなことをとても痛感させてくれる本書でありました。笑

4月1冊目_2024年76冊目