海を抱いたビー玉 / 森沢明夫


物にも「魂」が存在する。

壊れたら新しいものを購入する。

現在当たり前になったような概念を、

すべて否定するわけでは無いが、

日本人の美徳として、

長く使える物は、ちゃんと扱い、

大事にすることによって、

「魂」や「心」がやどるものかもしれない。

そんなことを考えさせてくれる1冊でありました。

運転手の親子に愛されたことで「心」を持った瀬戸内海の小さな島のボンネットバスと、手にした者に勇気を与える不思議な青いビー玉が、時代を超え、運命に導かれながら旅をしていくファンタジーです。少年と、バスと、少年の心を持った魅力的な大人たちが「生きることの美しさ」を語りかけてくれる。事実を元に描いた奇跡と感動の物語です。

古いボンネットバスが人々の情熱によって時代を越えて再生され、瀬戸内の町から越後の山中にもらわれ、震災から立ち上がろうとする山古志の子供たちに勇気を与えていく。多くのエピソードは実話ということですが、「愛されるモノには魂が宿る」という設定と、てエピソードを結ぶツールとして「海の色をたたえたビー玉」が登場します。

本書は三人称で描かれていますが、多くの割合でボンネットバスからの視点で語られています。ものにも「魂」や「心」があることが、そんな表現からもひしひしと感じ取れることが出来ました。

大切に使っていれば「どんなモノにも命がやどる」というそんな概念こそ、物に溢れて何でも手に入るような世の中になってしまったからこそ、改めて考えさせられ、消費するだけではなく物は大事に使って、愛着を注ぎ対話できるようなレベルで使い込むことが、大事なのでは無いかと、考えさせてくれるそんな1冊でありました。

便利な世の中になったからこそ、使い捨てではなく、大事に出来る一品を持てるような、そんな生活をするべきですね。笑

16 th in September / 259 th in 2023