とんこつQ&A / 今村夏子


 今村夏子さんは芥川賞受賞作「むらさきのスカートの女」で独特な世界観にハマり、本作で6冊目となります。「あひる」「星の子」「こちらあみ子」「父と私の桜通り商店街」どれもこれも、簡単に言ってしまえば「不思議」です。共通するのは、社会的には不適合と思われる人物たちの心情や行動がとても感じ取れる部分でしょうか。

 本作は短編集です。タイトルになっている「とんこつQ&A」が冒頭の作品ですが、題名から想像して小説なんだろうかと思い、手に取りましたが、とても不思議な物語でございました。

 「とんこつ」というは店の名前です。そこでアルバイトをする主人公ですが、人と話が全くできないが、メモに書いてあることを読めば喋れることを発見して、自分で店で想定される「問答集」つまり「Q&A」を作成して、なんとか仕事に適合していくお話です。

 そんな時、新しいアルバイトの女がやってきます。その女も主人公よりひどいクズな女で、全く喋りません。その女にも「Q&A」を店主に作って欲しいという依頼をされ、渋々作りますが、訳あってそれを「大阪弁」にバージョンアップさせられます。

 主人公と新しいアルバイト。店主とその子供。人間関係はもちろん、その中に含まれる心の葛藤が、すべて「Q&A」に落とし込むという手法で展開していきます。

 私はAudibleで聞きましたが、登録している人は是非聞いてほしいと思います。大阪弁が重要なキーになっているので、とても楽しめ、切なく、そして考えさせてくれる一冊だと思います。今村夏子。恐るべし。本書でもそれを十分堪能することが出来ました。

This is the 11th book in March and the 56th in 2024.