目の見えない人は世界をどう見ているのか / 伊藤亜紗


 五感とよばれる、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚。私は幸せなことに5つ全部兼ね備えている。一番失いたくないものを問われたら「視覚」と答えるだろう。そんな私たちが最も頼っている視覚という感覚を取り除いてみると、身体は、そして世界の捉え方はどうなるのか。

 様々な視覚を失った人たちから聞いたお話を元に、視覚がある自分にはとても理解不能な「感覚」を言葉ではありますが知ることが出来たことは、とても有意義な気がします。

 目の見える人は平面的に山を見て、目の見えない人は立体的に山を感じるという。自分という視点を超越し状況全体を俯瞰的に見下ろすという。そもそも死角が無いので、全てにおいて立体的に捉えている印象です。

 いかに見えることに私達が偏り、依存しすぎているのか。自分が見える世界だけが全てだと思いがちになっている。

 「見えないこと」は欠落では無く、脳の内部に新しい扉が開かれること。

 自分が見えなくなることは、考えたくないけれど、見えないことで「開かれる扉」があるならば、それは神様が与えてくれるインセンティブなのかもしれない。そんなことを考えさせてくれた一冊でありました。

3月20冊目/2024年65冊目