世界インフレの謎 / 渡辺努


 なぜ日本も含めた世界は突如として、インフレの波に飲み込まれたのか。ウクライナの戦争に起因している報道は多いが、実はそれが原因ではないことは、データがはっきりと示しているという。

 本書ではその「謎解き」について、いろいろと論じています。世界経済が大きく動くタイミングであり、その起爆剤になったにしか過ぎない。

 起爆剤というきっかけ、モノの値段をあげる「イイワケ」には十分すぎる出来事だったのだろう。それが私が受けた印象です。

 失われた30年とも35年とも言われる日本。「安ければ良い」というそんな購買行動がデファクトスタンダードになってしまった日本。「高いけど長持ちする」むかしは当たり前だった言葉は無くなってしまった印象です。

 そんな、我が国はきわめて重大な岐路に立たされていること。そんなことを明らかにして、私たちに大きな問いかけをしてくれる本書です。

 コロナ禍で経済は駄目になった印象はあるが「株価」に代表されるような、投機経済は上に向くという現象があった。それはコロナ禍の影響により、供給が減ったので物価が上がったせいなので、必然的に株価も上がるという、そんな図式が良く理解することが出来た本書でありました。

 株価に代表されるよう、価格は需要と供給のバランスで決まります。供給がそのままであれば、需要が減ると価格は上がらない。

 先進国の中で日本が現在むかえている「超人口減少フェーズ」は過去の人類史でも史上初ともいってもいいような出来事です。

 供給は同じでも、需要は過去の人類史ではあり得なかったペースで減って行く。内需だけで考えればデフレまっしぐらですが、外因もたくさんあるがそうでも無い。それがここ1年でプラスに転じてきているという現実。

 多くは語りませんが、こんなバランスを理解できたというだけで、本書を読んだ甲斐がありました。笑 本書は「世界インフレの謎」という題名ですが、ここ何年かで物価が上がった印象があるのは「ウクライナ有事」のせいでは無い。

 値上げするキッカケを待ち望んでいた。そんな企業がたくさんいた。そして値上げのイイワケを待ち望んでいた。そんな社会の闇を少し垣間みることが出来ました。笑

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