ディズニーキャストざわざわ日記――〝夢の国″にも☓☓☓☓ご指示のとおり掃除します / 笠原一郎


 著者は大手ビールメーカーを 57歳で早期退職し、オリエンタルランドに入社、65歳で退職するまでの、8年間で見た「夢の国」の「ありのまま」の姿が綴られています。

 本書をつづろうと思ったのは、数多くのディズニー本に対する違和感が一因だという。私はディズニーに関する本は、本書でも引用されていたが、松岡圭祐さんの「ミッキーマウスの憂鬱」と「ミッキーマウスの憂鬱ふたたび」しか読んだ覚えが無い。

 松岡圭祐氏は言わずと知れた人気作家ですが、2冊の本を読んだ感想で私が綴った言葉は・・・「おみごと。ミッキーファンになりそう。」だった。しかし著者いわく、松岡氏の本の内容はよく取材されている印象はあるが、自分の体験では感じられなかったという。

 著者がついた仕事は「カストーディアルキャスト」です。松岡圭祐氏の著書の中でも登場する、簡単にいえば場内を掃除する人です。

 公式サイトにはこの様に書いてあった。レストランでの清掃とご案内、パーク内外の清掃に加え、写真撮影や道案内など素敵な思い出作りのお手伝いをします。「こんな人にオススメ」ゲストと身近に触れ合いたいと思っている人/お掃除やきれいにすることが好きな人ゲストの素敵な思い出につながるよう、おもてなしをしたいと思う人

 では実際に従事した側から見た世界はどうなのか、8年間、カストーディアルキャストとして従事した著者だからこそ語れる、いろいろなエピソードはとても興味深く読ませていただきました。

 ゲロの片付けは嫌だとか、動物の死体を処理するがネズミは特に優遇されないとか、便所に立てこもるやつの話とか、時給が10円上がっても口外するなと警告されるとか、神対応と世間で称賛された東日本大震災の対応は内部ではどうだったのか。

 レビューでこんなことを書いている人がいた。「やりがい搾取」とも受け取れる雇用体系で「夢の国」を運営している。

 著者は自分の賃金についても触れている。やりがいがある反面、ビジネスの世界なのでとてもシビアな側面を垣間見ることが出来る。前述した様に、時給10円アップも口外することを強く禁止される。

 ディズニーが好きでなければ務まらない仕事かと思えば、ディズニーは好きでもないが、率先し休日出勤や、時間外労働を率先して遂行するキャストの話も紹介されていた。

 著者は57歳から8年、オリエンタルランドに籍をおいて稼働しており詳細な賃金についても触れています。ぶっちゃけ、私の会社に来れば、もう少しまともな待遇をしてあげるのに。

 そして「やりがい詐欺」というキーワード。詐欺をする気は別にありませんが「やりがい」という、充実感を提供することができれば、人材を引き付けるアイテムになるのでは無いか。そんなことを、とても考えさせてくれる本書でありました。

4月5冊目_2024年80冊目