子どもの自殺はなぜ増え続けているのか / 渋井哲也

 2022年以降小中高生の自殺者が3年連続で年間500人を超え、2024年に過去最多を更新した深刻な現実を起点に、大人の自殺が減少する中でなぜ子どもの自殺だけが増え続けるのかを、豊富な統計と具体的事例で解き明かしたルポになっています。

 著者は四半世紀にわたり生きづらい子どもたちの声に耳を傾けてきた経験から、虐待による家庭内の孤立と心理的ダメージ、市販薬の容易な入手が招くオーバードーズの急増を強調。

 ドラッグストア業界の隆盛を背景に、未成年でも手軽に大量購入でき、酩酊状態での自傷・自殺行動が増えている実態を、想像を絶する衝撃的な事例を交えて明らかにしています。

 いじめの複雑化やSNSを通じた人間関係の軋轢、教師による不適切な指導(指導死)も大きな要因として挙げられ、学校が命を救う場であると同時に追い詰める場となり得る二面性を指摘。コロナ禍での休校が家族関係の密着を強め、かえって苦痛を増大させたケースも紹介されておりました。

 さらに、こども家庭庁の設立など政策史を振り返りながら、文科省や専門機関の対策が遅滞し、十分な抑止効果を発揮できていない構造的課題を批判的に考察。子どもの自殺は「衝動的」と見なされがちですが、実際は親や教師にさえ見せない秘密の積み重ねによるものであり、情報不足が対策を難しくしていると分析。

 保健・福祉・教育の抜本的改善なしに解決しないとし、大人社会が子どもの心の危機に向き合う必要性を訴えています。本書は単なる問題提起を超え、子どもの自殺のリアルと社会の無力さを浮き彫りにした一冊という感じでしょうか。

 本書を読んで子どもの自殺増加の深刻さをとても痛感させられた。特にオーバードーズの事例や「指導死」の描写は衝撃的で、社会の対策遅れに強い危機感を抱きます。

 先日読んだ「歌舞伎町ララバイ / 染井為人」では、主人公の親友のトー横キッズが、オーバードーズで殺されるという設定であったため、とても情景が浮かぶようでありました。オーバードーズに関しては昔なかった手段ですが、それが子どもにはびこっているという事実を、とても恐ろしく感じさせられました。

 統計と実例を基に政策史まで丁寧に分析しており、大人として無視できない現実です。子どもたちの隠れた苦痛に耳を傾ける重要性を再認識させられる、そんな一冊でございました。

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