ブルーボーイ事件 / 中川千英子

 9月に19日に「令和8年度男女共同推進事業・市民講座」として、トランスジェンダー俳優の真田怜臣さんの講演会が行われるらしいのですが、私も行こうと思い申込みをしました。

 真田怜臣さんのプロフィールの中に映画「ブルーボーイ事件」ではトランスジェンダー女性を当事者として演じたと書いてありました。Kindleで検索したら書籍があったので、さっそく手にとってみました。本の表紙に写っている左から3番目のグリーンのワンピースを着ているのが、真田怜臣さんになります。実はNetflixで映画も見たんです。(笑)

 1965年(昭和40年)の東京を舞台に、実際の「ブルーボーイ事件」を基にした物語のようです。高度経済成長期、東京オリンピック後の東京では国際化を意識した「街の浄化」が進められ、売春の取り締まりが強化されていた。

 しかし、戸籍上は男性のまま性転換手術を受けて身体を女性的にし、女性として体を売って働く「ブルーボーイ」たちは、売春防止法の対象外だったため警察を悩ませていた。

 警察は生殖を不能にする手術が優生保護法(現在の母体保護法)違反にあたるとして、手術を行っていた産婦人科医・赤城を逮捕・起訴した。

 同じ頃、東京の喫茶店でウェイトレスとして働くサチは、恋人の若村篤彦からプロポーズを受ける。サチは赤城のもとで性別適合手術を進めており、篤彦もそれを承知した上で最後の造膣手術を終えるまでプロポーズを受けないつもりだった。

 幸せを感じる一方、弁護士の狩野がサチのもとを訪れ、赤城の弁護のため証人として法廷で証言してほしいと依頼。他の患者は男娼が多く、普通の女性として暮らすサチの証言が必要だと懇願。

 今の生活を壊したくないサチは一旦断るが、赤城の逮捕で残りの手術を引き受けてくれる医師が見つからず途方に暮れていきます。

 裁判では、手術を受けた当事者たちが証人として出廷。元締め的な存在のメイやアー子らが証言する中、弁護側の狩野は手術を「性転換症という精神疾患の治療」と位置づけようとする。

 サチは証言を拒み続けていたが、アー子の死や周囲の状況、自身の過去を振り返る中で決意を固め、法廷に立ちます。サチは証言台で自身の性別違和の歴史や思いを語ります。

 検察側からは「健康な男として生まれたなら家庭を持ち子どもを残すのが責任」「女の姿をした男」などと詰め寄られるが、サチは「誰かが決めた女にはなれない」「私は私でありたいだけ」と訴え、赤城の手術が心の問題に向き合う助けになったとも語ります。

 裁判長から「あなたは今、幸せですか」と問われ、サチは「私は今、幸せです。でもきっと皆さんが思うような幸せではありません」との証言。

 判決では、性別適合手術そのものは患者にとって必要な措置として一概に否定されないとされつつも、赤城の場合は十分な診察や厳格な手続きを欠いていたとして有罪。この事件をきっかけに国内での性別適合手術は長くタブー視され、事実上約30年中断する要因となった。

 数年後、田舎町を訪れた狩野は、サチが洋服店を営み、篤彦と穏やかに暮らす姿を目にします。サチは自身の幸福を静かに生きる形で見出していたという、微妙なハッピーエンドでございました。

 性転換した有名人など、昔は「カルーセル麻紀」くらいしかいませんでしたが、最近は「はるな愛」「KABA.ちゃん」「GENKING」「佐藤かよ」など、テレビで普通に目にする人が増えた。昔よりは世間からの風当たりは強くはないだろうが、性同一性障害に関する偏見や差別は存在します。

 そんな人達を排除するために、国家の権力が動いたという事実を知れただけでも、本書を読んだ甲斐は十分にあったと思います。

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