硝子のマンション/染井為人

 染井為人さん、「悪い夏」「正義の申し子」「引きこもり家族」「震える天秤」「滅茶苦茶」に続き、本書で6冊目のアウトプット。本書は途中から、絶対コイツだろう!! そんな珍しい感覚がありました。(笑)

 舞台は東京・板橋の築30年マンション「ベルドゥムール板橋」。これまで一度も事故や事件が起きたことのない「平和な」物件として知られ、駅徒歩7分で家賃も手頃、住人たちも表向きは幸せそうに見えが、内情は不倫、モラハラ、DV、虐待などが渦巻く歪んだ人間関係の坩堝だった。 

 物語の中心となるのは、以下の3人の女性:203号室・小関凛(20代、保育士):遠距離恋愛中の恋人との関係が進展せず、悩みを抱える。303号室・真野遥香(30代、主婦):休職中の夫と幼い娘・息子(さらに妊娠中?)の4人家族。夫のDV疑惑や家庭内の理不尽なストレスに限界を迎えている。岸本奈津子(40代):モラハラ夫に支配され、義母同居の話などで息苦しい日常を送る。 

 当初はただの隣人関係だった3人だが、遥香が夫を誤って死なせてしまう事故がきっかけで状況が一変。夫の死体が遥香の部屋のベランダに置かれたままという絶体絶命の事態に、階下の凛と階上の奈津子が知ることになり、奇妙な成り行きで3人は死体遺棄に協力して結託。 

 彼女たちの視点が交互に描かれる多視点形式で物語が進行。防犯カメラの映像消去をマンション管理人・中牟田に四苦八苦しながら頼む場面もありつつ、隠蔽工作、さらなる罪の積み重ね、行き当たりばったりの行動と偶発的な出来事が連鎖し、巧妙なトリック的な感じではではなく「現実味のある」泥沼劇が展開そていきます。 

 3人はそれぞれのパートナーから受ける理不尽や抑圧に共感し合い、「連帯」を生むが、それは同時に共犯関係という鎖となります。母としての責任が行動を駆り立てる一方で、人間性の闇や本性が露わになっていく描写が強烈です。現代女性が置かれる不条理や、都市部での「ほどよい距離感」の難しさ、隣人同士の干渉と無関心の関係性がとても良く伝わって来る感じです。そして同時に自分は田舎者で良かったとそんなことを感じさせてくれる作品でございました。(笑)

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