正体 / 染井為人

 染井為人さん、「悪い夏」「正義の申し子」「引きこもり家族」「震える天秤」「滅茶苦茶」「硝子のマンション」「みずいらず」「歌舞伎町ララバイ」に続き、本書で9冊目のアウトプット。最近は手当たり次第に読んでいる感じです。(笑)

 埼玉県の民家で、若い夫婦と2歳の息子が包丁で惨殺される一家三人殺害事件が発生。悲鳴を聞いた隣人の通報で駆けつけた警察により、現場にいた18歳の少年・鏑木慶一(かぶらぎ けいいち)が現行犯逮捕される。

 養護施設育ちの彼は当初精神疾患を理由に罪を逃れようとするが、後から無罪を主張。凶器の指紋や生存者・井尾由子の証言などから有罪とされ、少年ながら死刑判決を受け、神戸拘置所に収監されます。

 逮捕から約1年半後、19歳となった慶一は拘置所を前代未聞の方法で脱獄。名前・髪型・服装を変え、顔を整形して日本各地を逃亡します。脱獄488日間、総距離は3000km超え。警察の追手が迫る中、彼は様々な職場で潜伏しながら、関わる人々の窮地を救っていく。

 東京オリンピック施設の工事現場では、土木作業員「遠藤雄一」として働き、足を負傷した同僚・野々村和也を助けます。メディア企業ではライターとして、不倫の傷を引きずる安藤沙耶香を支えます。

 スキー場の旅館では、痴漢冤罪で人生を失った元弁護士・渡辺淳二と出会います。パン工場では、新興宗教にハマりそうな近野節枝らを救います。

 最後は千葉のグループホーム「アオバ」でヘルパー「桜井翔司」として働き、新人介護士・酒井舞と関わり好意を持たれ、男女関係の複雑さがとても詳細に描かれています。

 出会った人々は、誠実で優しく、命がけで他人を助ける彼の姿に心打たれるのが共通事項。しかし後で彼が「あの凶悪死刑囚」だと知り、激しいギャップと困惑に陥ります。慶一の行動は単なる逃亡ではなく、自分の無実を証明するためだったということが、最後に明らかになります。

 これより先は、これから読む人にとっては、メチャ、ネタバレになるのでふせて起きますが、少し触れると鏑木慶一(かぶらぎ けいいち)は、最後死んでしまいます。

 著者があとがきで触れていましたが、読者からの声で「殺して欲しくなかった」という声が、たくさん届いたという。私も全く同感だったということで、本書のアウトプットを終えようと思います。(笑)

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