黒い糸 / 染井為人

 染井為人さん、「悪い夏」「正義の申し子」「引きこもり家族」「震える天秤」「滅茶苦茶」「硝子のマンション」「みずいらず」「歌舞伎町ララバイ」「正体」に続き、本書で10冊目のアウトプット。ハズレ無しでほんとうにどれも面白い。(笑)

 結婚相談所でアドバイザーとして働くシングルマザーの平山亜紀は、顧客のトラブルから始まる悪質な嫌がらせ(無言電話、職場荒らし、SNS乗っ取りなど)に苦しめられ、精神的に追い詰められていきます。

 一方、息子・小太郎が通う小学校6年2組では、クラスメイトの女児が下校中に失踪する事件が発生。元の担任が休職したため、臨時担任となった長谷川祐介がクラスを預かることに。

 クラス委員長の秀才・倉持莉世は、転入生・佐藤日向の母親・佐藤聖子を犯人だと推理するが、莉世自身も何者かに襲われて意識不明の重体に陥ります。 

 亜紀と祐介、二つの視点が交互に語られ、表面上は無関係に見える嫌がらせと学校事件が、徐々に絡み合いながら異常犯罪の連鎖を生んでいく。

 登場人物のほとんどが怪しく、親切に見える人物ほど不穏で、読んでいて誰を信じていいかわからなくなる感じがお見事です。(笑)

 莉世の推理や祐介の人格形成研究者である兄の指摘により、佐藤聖子への疑いが強まるが、動機や手口が不可解です。 

 嫌がらせの犯人や一連の事件の黒幕は、最初に疑われたクレーマーではなく、複数の人物の因縁が複雑に絡んだ結果として明らかになります。

 これ以上書くと、読んでいない人にネタバレになりすぎて悪いので書きませんが、複数の「過去の繋がり」「遺伝」「心理的な歪み」「利害関係」などの繋がっていた「黒い糸」がほどけたとき、衝撃の真相が浮かび上がり、単なる犯人探しを超えた恐怖が襲ってくる感じでしょうか。

 前に読んだ「みずいらず」で著者本人をモデルとした短編で「プロット(話の全体的な流れや展開)」を書かないといっていましたが、この展開はプロット無しで書けるのだろうかと純粋に思う。

 ”染井為人はプロットを書かないの?”と、検索をしてみたら、たしかにこう出てきました。

 染井為人は、プロットをあまり作らない(作れない)と本人が語っています。作り込んで執筆するのではなく、登場人物の動きや展開に身を任せて書き進めるスタイルをとっています。

 いつも思いますが、ゼロからこんな物語を創出出来る小説家って、ホントすげぇ〜なぁ〜と、思わせてくれる本書でありました。

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