ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実) / 田中淳夫


 バブルの頃、自然破壊の象徴のように語られがちだったゴルフ場。その開発の歴史から現在のゴルフ場の自然はどうなっているのか。そしてよく語られる、農薬問題についてとても詳細に書かれています。

 現在、ゴルフ場は全国に2300以上ある。その総面積は千葉県に匹敵するという。そこには、意外や絶滅危惧種を始めとする多くの動植物が生息していた。しかも開発を通して森林面積が増えている実態が浮かび上がる。その姿は現代の里山そのものだという。

 中山間地域の里山では、人が居なくなって管理されない状態に荒廃が進む一方、ゴルフ場には自然が残され、時には生物の避難所となり、農薬の汚染もみられない。特筆すべきは、土壌流出は本来の自然より少ないくらいだという。

 だが一方でゴルフ自体の衰退もあり、閉鎖するコースも増えてきている現実もある。閉鎖されると管理しなくなるため、自然には戻るだろうが、適切な形の自然になるのだろうか。少なくとも芝はすぐ枯れてしまうので、土砂流出など懸念材料は多い。

 減る一方のゴルフ場を、これからどう利用して行けば良いのか。そんな提案もたくさんの事例を含めて紹介しています。気になったのは「樹木葬」だろうか。以下引用。笑

 緑に囲まれた霊園も人気を呼びそうだ。通常の石塔の並ぶ墓地ではなく、樹木葬のような埋葬法をとることによって、緑あふれる環境を維持してほしい。スウェーデンのストックホルム郊外に建設されたスコーグスシュルコゴーデン(森の墓地)は、敷地面積が約100ヘクタールとゴルフ場と似た規模だが、森と芝生の中に点在するように埋葬地が広がっており、その美しい景観から1994年に世界遺産に選定されている。

 確かにググって画像を見ると、とても素敵です。「グレタ・ガルボ」がそこに埋葬されたらしい。笑

 著者はこんな言葉で締めくくっています。

 環境省は、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約締結国会議で、「SATOYAMAイニシアティブ」を打ち出した。これは日本の里山を例として人と自然が共存できる関係を打ち出したものだ。この考え方は、ゴルフ場にも応用できるはずだ。もう不毛のゴルフ場自然破壊論は封印して、ゴルフ場による美しく豊かな自然づくりを競う時代になるべきだろう。

 「SATOYAMAイニシアティブ」?? 初めて聞く言葉です。ググったら環境省のホームページにこう書かれていました。

 わが国の里地里山のように農林水産業などの人間の営みにより長い年月にわたって維持されてきた二次的自然地域は世界中に見られますが、現在はその多くの地域で持続可能な利用形態が失われ、地域の生物多様性に悪影響が生じています。世界で急速に進む生物多様性の損失を止めるためには、保護地域などによって原生的な自然を保護するだけでなく、このような世界各地の二次的自然地域において、自然資源の持続可能な利用を実現することが必要です。

 わが国で確立した手法に加えて、世界各地に存在する持続可能な自然資源の利用形態や社会システムを収集・分析し、地域の環境が持つポテンシャルに応じた自然資源の持続可能な管理・利用のための共通理念を構築し、世界各地の自然共生社会の実現に活かしていく取組を「SATOYAMAイニシアティブ」として、さまざまな国際的な場において推進していきます。

 環境省の人は定年になったら、みんな田舎に引っ越して里山に従事せぇ〜! 本はとてもおもしろかったのですが、最後にググったばっかりに、少しイラッとしてしまいました。笑

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