本気で稼ぐ! これからの農業ビジネス / 藤野直人


 著者は中学の頃より起業を志し、行き着いたのは「農業」だったという。2005年、「農業の産業化」を理念に、株式会社クロスエイジを設立。九州を基盤にして、主に青果市場や農業法人・出荷グループ向けのコンサルタントとして企業活動を開始。

 現在は、食と農の企画・コンサルティング事業の他に、流通開発事業として、農産物の需要者からの要請を受けた仕入れ業務の代行サービスを展開して、九州一円の100を超える産地と50を超える販売先をつなぐ、農業分野では例の少ないコーディネーターとして活躍している感じです。

 2008年には、発掘した商材の試験販売やモニタリング機能を兼ね、小売店舗・農家“直”野菜「時や」を福岡市内にオープン。現在では2店舗を展開しているという。生産者や産地の要望に対応して「食と農の企画・コンサルティング事業」「流通開発事業」「消費者直販事業」など、生産者と消費者の交流を深めているかんじでしょうか。

 儲かる農業を実践していくためには、お客さんとコミュニケーションを取りつつ、生産量にふさわしい量を出荷し、ふさわしい対価を得る、「中規模な流通」に挑戦することが必要だという。

 本書では「中規模流通」の具体的な販路やアプローチするためのツール、「中規模流通」に対応するための商品作りや供給体制の確立、連携を図るべきプレーヤー、次なる展開など、農業所得1000万円を作りだす新しい農業ビジネスの仕組みを提案しています。 

 農業の現状や進むべき方向といった本質的な問題から、着実に稼ぐための「売り方」を中心とした仕組み作りまで、 儲かる農業のステップを「稼ぎ力」をつけた著者が解説しています。

  新聞やテレビではなにかしら農業に関する報道がある。しかしそれらは報道というフィルターを通っているため、いまいち実態と違うのでは無いかといつも思っている。

 著者は、生産者でもなく、また学者でもないが、生産者と消費者の間に立つ第三者視点から、分かりやすく業界構造の問題を指摘しており、また当事者として農業に関わった経験から解決の方向性を導いています。

 製造業では中小企業が業界を支えているが、農業においては、この中小企業に位置づけられる農家が育たない構造が存在する。その構造を作っている原因はなにか、解決するためにはどのようにすればよいのか。

 農業の現状を知ることにより、少し不安になる反面、著者の前向きな姿勢には少し勇気をもらえる印象です。

「原価提示型販売」という聞いたことがない言葉を使っていた。私も建設業という仕事柄、値段設定にはいつも頭を悩ます。「原価」はもちろん常に意識はしているが、「タイミング」で値段設定するときがある。要するに「暇なら安くてもイイ」。そんな時この「原価提示型」という手法をうまく利用できないかと少し思ったりもした。笑

 どのように野菜を売っていくかを農家自身で考えなくてはいけない。 薄利多売ではこれからの農家はやっていけない。これからの農業は、 商品の価値を高め利益をあげていくことが大切。ごく普通に語られていることですが、そんな基本を再認識させてくれる本書でありました。

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