著者は元銀行員で防衛研究所主任研究官。太平洋戦争を銀行・金融の視点から描いています。
日本は国力を大きく上回る長期総力戦を遂行した。その鍵は金融による「国力の水増し」だった。
銀行制度を活用し、国債発行・通貨増発・特殊銀行のバランスシート拡大で戦費を賄った。日銀は国債を引き受け民間金融機関に売却し、資金統制で国債購入を割り当てた。
民間は消費を抑え預金を国債購入に回し、「欲しがりません勝つまでは」を実践。銀行自身も紙不足で伝票を節約するなど軍需優先に従った。
特に「現地通貨借入金」が重要であり、占領地で現地銀行を通じ資金を調達し、国内GNPから切り離した。
昭和19年には戦費の約半分を占め、表面的にGNPの99%が戦費になっても実質国内負担は53%程度に抑えられ、外資金庫のような「幽霊銀行」も設立された。
植民地・占領地では朝鮮銀行・台湾銀行・横浜正金銀行などが銀行業・造幣・紙幣印刷・現金輸送・店舗避難を担い、軍の金庫番も務めた。
戦争末期、形ある資源は枯渇したが政府・日銀・特殊銀行のバランスシートは数倍〜80倍近く膨張。終戦後も清算作業が続き、銀行員は信用維持の矜持を保ち、空襲や原爆後も営業を再開した。
引き揚げ者の植民地紙幣両替や占領軍経費負担も対応。一部債務は相手が消滅したまま今も政府帳簿に残っているという。
本書は銀行員たちの血と汗と涙の奮闘を通じ、戦争の経済的からくりと「国は破れてもバランスシートあり」の現実を明らかにしています。
戦争の本は何冊か読んだことがありますが、戦争を銀行の舞台裏からの視点はとても新鮮でありました。
無謀な総力戦がなぜ可能だったのか。金融の仕組みを知ることで妙に納得できたようなきがします。
現地通貨借入金による「水増し」や、敗戦後も信用を守ろうとした銀行員の、自分自身の能力や立場、誇りやプライドをもって、自分を律する気持ちなど、とても印象深いものでありました。
形あるものは尽きたのに負債だけが残る描写は、戦争の本質を突く内容であるような気がします。現代の財政・金融政策を考えるうえで、くわえて戦争を繰り返すアメリカを知る意味でも、そんな「戦争と金融」の関係性を少し知れただけでも、手にとった甲斐のある本書でございました。
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