Nのために/湊かなえ

 湊かなえさんの本は、「母性」「落日」「告白」「サファイア」「未来」「高校入試」「リバース」「往復書簡」「ブロードキャスト」「残照の頂 続・山女日記」「暁星」「境遇」に続く13冊目のアウトプットです。

 超高層マンション「スカイローズガーデン」の一室で、そこに住む野口貴弘(42)とその妻・奈央子(29)の変死体が発見された。

 現場に居合わせたのは、20代の男女4人。杉下希美、安藤望、西崎真人、成瀬慎司。警察の事情聴取に対する彼らの証言は、一見矛盾がなく、西崎が自ら犯行を認める形で事件は決着を迎える。

 しかし、証言の裏側には、誰もが「一番大切な人」のために考えた、別の真実が隠されていた。

 時は遡る。大学1年の秋、台風による床上浸水をきっかけに、同じ古いアパート「野バラ荘」に住む希美、望、真人が親しくなる。それぞれに過去のトラウマや屈折した思い、そして夢を抱く3人。努力家の望、小説家を志す真人、推理小説好きの希美は、やがてある計画に手を染めていく。その計画の目的は、すべて「N」のためだった。

 石垣島での運命的な出会いが、野口夫妻との交流を生む。穏やかな日常の裏側で、徐々に絡み合う人間関係。流産後の心身の不安定、夫婦の間に潜む問題、若者たちの想い。

 モノローグ形式で語られる各視点が、時間軸を行き来しながら、事件の全貌を抒情的に浮かび上がらせていく。本作は、『告白』『少女』『贖罪』に続く作品だというが、『告白』しか読んでいないワタシには、前作との関連性は全くわからなかった。(笑)

 切なさと緊張感に満ちた物語は、「自分より大切な人を持つ」ことの意味を、静かに、しかし強く問いかけてくる。誰が誰の「N」なのか。少し複雑すぎて、少し難解な印象も残るそんな内容でございました。

 ミステリーの要素を持ちながら、核心は「愛のかたち」にあると、プレビューで書いている人がいましたが、たしかにそんな印象です。

 誰もが誰かを守ろうとして嘘をつき、罪を分かち合う姿は切なく、とても胸に残る印象です。華やかなハッピーエンドではなく、静かな余韻と共に「自分より大切な存在」を考えさせる。「湊かなえらしい」というのは簡単ですが、登場人物たちの純粋すぎる想いが、かえって悲劇を生む構造が、やっぱり「湊かなえらしい」と書いて終わらせていただきます。(笑)

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