移動と階級 / 伊藤将人

 現代社会を「移動できる人」と「移動できない人」に分断する「移動格差」の実態を、独自調査と研究から明らかにした内容になっています。

 移動とは通勤・通学、買い物、旅行、引っ越しから観光、移民・難民、気候危機まで幅広い行為で、一見個人の自由に見えるが、実は経済力、性別、居住地、年齢、身体状況などにより機会や結果が大きく不平等だと指摘しています。

 約3000人調査では、半数弱が「自由に移動できない人間」と感じ、5人に1人が移動の自由に不満、3人に1人が他人の移動を羨ましいと思い、3人に1人が過去1年で都道府県外旅行をしていない。

 年収が低いほど飛行機利用などの移動経験が少なく、社会や文化の中で「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」と期待される、行動や役割、見栄えのルールの中では、女性の移動を制約されている。

 移動を「資本」と見なし、できる人はさらに移動しネットワークを広げ成功を増幅する一方、できない人は選択肢が狭まる再生産スパイラルが生じ、「移動階級社会」を形成すると論じています。

 「移動すれば成功する」という言説にも疑問をいだき、移動は社会参加の出発点でありながら構造的問題だと強調しています。

 日常生活から地球規模の課題まで内容は多岐にわたり、移動から生じる分断・格差・不平等をとても考えさせてくれる内容でございました。

 日常で「当たり前」に移動していることは、実は特権であり、感謝すると同時に、自分の移動可能性を振り返り、社会全体で人や物がスムーズに移動する能力や、移動手段・仕組み全体のことを考えるきっかけを、頂けるような本書でありました。

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