アウトプットするにあたり、読書メーターで検索したら「タクジョシリーズ」の第3弾の連作短編集ということを知り、第1弾から読みたかったと少し悔やみましたが、本書だけでも十分楽しめる一冊でございました。
大学新卒でタクシー会社・東央タクシーに入社した高間夏子は、29歳・入社7年目となり、女性ドライバーとして珍しい存在ながら仕事に慣れ、自信も持って日々運転を続けていた。
彼女は「女性ドライバーが増えれば女性客も安心して乗れる」という理想を抱き続けながら、さまざまな乗客の人生に短い時間ながらそっと寄り添います。
物語は主に6つのエピソードからなり、それぞれ日付と場所をタイトルに持った独立した話として展開しています。夏子を中心に、同僚ドライバーたちや乗客側の視点も交え、タクシー車内という密室での一期一会の出会いが描かれます。
終電を逃したアラフォー女性の不倫別れ話、危篤の母親のもとへ急ぐ息子の切実な想い、戦力外通告を受けたプロ野球選手の崖っぷちの心情、取引先への謝罪に向かう課長の葛藤、足の痛みで悩む会社員の日常など、乗客一人ひとりが抱える人生の機微が、ドライバーとの会話を通じて浮かび上がります。
同僚ドライバーの刀根和正は、過去の上司との衝突や離婚、息子との関係に悩みながらも仕事に向き合い、夏子のような後輩の存在に刺激を受けます。他のドライバーや乗客も、それぞれの背景や家族の問題、仕事の迷いを抱えつつ、車内の短い時間で心の変化や前向きな一歩を見せます。
全体を通じて、大きな事件やドラマチックな展開はありませんが、日常のささやかな会話や気づきが中心です。夏子自身も30歳を目前に「このままでいいのか」と振り返りつつ、今できる仕事に誠実に向き合い、「すべての道は昨日から明日へつながる」と前を向きます。
タクシードライバーという「人と関わる仕事」の誇りや、人間同士の温かな交流が丁寧に描かれ、読後にほっこりとした余韻を残す作品です。
一期一会の車内会話を通じて、誰もが抱える迷いや家族の想いが浮かび上がり、大きなドラマはなくとも「明日への道」が静かに感じられる作品です。
私もタクシーは飲んだあとに、よく利用させてもらっていますが、短い時間しか乗らないので、本書の様に運転手と話し込むことはありませんが、タクシーという仕事の尊さを少し感じさせてくれる、そんな作品でございました。
順番は逆になりましたが、あとの2作も是非読んでみようと思います。
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