昭和歌謡大全集 / 村上龍

 なんか最近「村上龍スイッチ」が入ったのか、見かけるたびに手にとっています。せっかくなので、このスイッチの勢いを緩めないように、精進しようと思います。(笑)

 東京都調布市を舞台に、昭和歌謡曲をこよなく愛する冴えない若者たちと、同じ下の名前「ミドリ」でつながった中年女性グループ「ミドリ会」が、些細なきっかけから始まる血で血を洗う壮絶な復讐合戦を繰り広げる、ブラックユーモア満載の異色小説です。

 主人公の一人であるイシハラら6人の若者たちは、特に親しいわけでも共通の深い趣味があるわけでもないが、なんとなく集まっては深夜に派手な衣装を着て昭和歌謡を熱唱するパーティーを楽しむ日々を送っています。ある日、メンバーの一人スギオカが路上で通りすがりの女性・ヤナギモトミドリをナイフで刺殺します。これはただの通り魔的な衝動殺人でした。 

 ヤナギモトミドリは、離婚歴のある中年女性たちで構成される「ミドリ会」のメンバーでした。彼女たちは全員下の名前が「ミドリ」であるというだけの理由で親交を深め、カラオケなどでつるむ間柄。仲間を殺されたミドリ会の面々(スズキミドリ、ヘンミミドリ、イワタミドリら)は、現場に残された遺留品などから犯人を特定。復讐を決意します。

 一方、イシハラたちはスギオカの死を知り、犯人がミドリ会のメンバーだと確信。怪しげな金物店で拳銃を入手して反撃を開始します。以降、両グループはエスカレートする武器(ナイフ、銃、さらにはミサイル級のものまで)を使い、調布の街を舞台に次々と報復殺人を繰り返す狂気の連鎖に陥っていきます。 

 物語の背景には、現代社会における孤独と疎外感が強く描かれている感じです。若者たちは社会から取り残されたような存在で、歌うことだけが生きがい。中年女性たちも、離婚や日常の退屈から逃れるようにグループを作り、事件を通じて初めて「本気でやりたいこと」を見つけたかのように生き生きと復讐に没頭します。随所に流れる昭和歌謡曲が、暴力シーンを不気味に、かつノスタルジックに彩ります。

 クライマックスでは、生き残ったイシハラが極端な手段に走り、核兵器を作ってヘリコプターから調布市全体を巻き込む大規模破壊へと至ります。双方のグループは、互いの存在によって初めて「生きている実感」を得た皮肉な結末を迎えます。

 ただのバイオレンスではなく、現代人の空虚さや「つながり」の希薄さを風刺した、少しブラックコメディ的な一面も感じられる作品でございました。

 村上龍らしい過激さ、そしてユーモアが炸裂しているそんな作品です。しかし、いつも思いますが、こんな設定と展開を「ゼロからイチ」にして、膨らましていく小説家ってホントスゲぇ〜な〜と、そんなことを思わせてくれるそんな作品でございました。

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