KYOUKO/村上龍

 村上龍さんの本は、「限りなく透明に近いブルー」「69 sixty nine」「コインロッカー・ベイビーズ」「テニスボーイの憂鬱」「ユーチューバー」「インザ・ミソスープ」「55歳からのハローライフ」「新13歳のハローワーク」「昭和歌謡全集」「オーディション」に続き、本書は11冊目のアウトプットです。

 米軍基地のある街で育った日本人女性キョウコを主人公にした物語。幼くして両親を亡くし、叔父夫婦のもとで孤独を抱えながら暮らしていた彼女は、8歳の夏にキューバ系アメリカ人のGIでダンサーでもあるホセと出会います。

 公園や空き地で数カ月にわたり彼からラテンダンスを教わり、その経験が彼女の人生に決定的な意味を与え、ダンサーとしてのアイデンティティを芽生えさせた。

 ホセがアメリカに帰国する際、ニューヨークの住所を教えてくれたことをきっかけに、キョウコは「大人になったら会って直接ありがとうと伝え、もう一度一緒に踊りたい」という強い想いを抱き続けます。

 21歳になったキョウコは、トラックドライバーとして働いて貯めた資金を手にニューヨークへ渡ります。ホセの古い住所を訪ねますがすでに引っ越しており、偶然知り合ったリムジン運転手のラルフをはじめ、エイズを患う画家やダンス教室の関係者、友人たちといった人々の助けを借りて手がかりを追います。

 最終的にホセの叔父パブロが経営するバーを訪れ、キョウコがホセから習ったルンバ・コルンビアを踊ることでパブロの心を開き、ホセの居場所を知らされます。

 しかし再会したホセはHIVに感染し、AIDSの末期症状で心身ともに衰弱し、記憶も混濁してキョウコのことをまったく覚えていない。ホセがマイアミに住む母親に会いたいと願っていることを知ったキョウコは、医療器具や薬品を積んだバンに彼を乗せ、ニューヨークから南へ向かう旅に出ます。

 ハイウェイを下る道中、キョウコは占いをするインディアンや手癖の悪いが憎めない黒人少年、人種偏見を露わにする南部の警官、富豪の白人夫妻など、さまざまな人々と出会い、異なる価値観に触れながら自己を見つめ直していきます。

 ホセはキョウコを「エレーナ」と呼ぶことを望み、彼女はそれを受け入れ、黙々と車を走らせて点滴を打ち続けます。マイアミ近くでキョウコが二人の男に襲われそうになったとき、荷物からダンスシューズを見つけたホセが突然記憶を取り戻し、彼女を救います。

 二人はチャチャチャを踊り、その最中にホセは息を引き取ります。生と死、悲劇と歓喜が一つの舞踏の中で溶け合う瞬間。キョウコは約束通りホセの遺体をマイアミの母親のもとへ届けます。母親は彼女に「ダンスが好きならキューバへ行きなさい」と告げ、キョウコはさらにキューバへと旅を続けます。

 ホセが痛みに襲われるとき、100から7を順番に引いて行くことと、痛みのレベルにボクサーの名前を使うんだといい最大級を「マイク・タイソン」いちばん痛まない時が「ミッキー・ローク」。彼の「猫パンチ」という言葉が流行ったのを思い出し、少しウケました。

 村上龍の作品のイメージは、ドラッグ、セックス、暴力、殺人など、刺激的で途中で読むのをやめようと思うようなシーンが含まれているものが多いですが、本書はそんなところもなくてすんなりと読めてよかったです。

 加えて思ったことは、著者はダンスに関することをすげぇ〜取材したり、勉強したりしたんだろうなぁ〜と、とても感心させられました。

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