殺した夫が帰ってきました / 桜井美奈


都内のアパレルメーカーに勤務する主人公。

取引先の男に言い寄られ、

自宅の前で待ち伏せされ、訪れたピンチ。

そこに5年前、殺したはずの夫が現れ、

言い寄る男を追い払う。

戸惑う主人公をよそに、男は家に上がり込む。

話を聞くと、男は記憶をなくしているが、

主人公と一緒に暮らしたいという。

かつての男はとても暴力的な人間だったが、

暮らしはじめると、そんな影は一切ないどころか、

家事をこなしてくれるなど、

とても同一人物とは思えない。

平穏な2人で生活する日々が過ぎていく。

しかし、そんな生活のもとに一通の手紙が届く。

手紙には一言だけ

「オマエの過去を知っている」と書かれていた。

差出人も書いていなければ、消印も細工跡が見えた。

それから始まる探り合いの生活。

そしてニ通目の手紙が届く。

「オマエが殺した」

そして、宮城県の大山警察署から連絡が入る。

「夫が見つかったので来て欲しい」

大山警察署は実在し無いようですが、本書に仙台と盛岡が登場します。

そういう些細なことで、物語に引き込まれることがある。笑

主人公の生い立ちから始まる、複雑な人間関係。

そして、母との関係性。

どうしてこんなに小説に出てくるやつは、

こんなに悲惨なんだろう。

いつもそんなことを想う。笑

ミステリー特有の、次が気になってどんどん読み進めてしまう、とても引き込まれる内容でありました。

とても興味深い文章があったので、メモしておきます。

恋はアルコールの酔いと似ている、と思う。酔っているときは現実的な判断ができない。だけど、時間が経つと徐々に頭が冷えてくる。そして、完全に酔いから覚めたときに気づくのだ。永遠に酔い続けることは無理だと。

最後に残るのは、楽しかったいくつかの記憶と、苦い思い出と、頭の痛い事実。そしてまた、新しいアルコールを見つけると、結末を知っていても手を伸ばしてしまう。自分の学習能力のなさに呆れるしかない。

本当に、呆れるばかりの毎日です。笑

02 th in August / 218 th in 2023