染井為人さん、2022年7月「悪い夏」、2024年12月「正義の申し子」、2026年5月「ひきこもり家族」に続く4冊目のアウトプット。読書メーターに登録しようとしてみたら、まだまだたくさん作品があるようです。本書を読んでもっと違うのも読みたくなってしまいました。(笑)
フリージャーナリストの俊藤律は、福井県で起きた高齢者運転の死亡事故を取材。高齢男性・落井正三(86歳)が運転する軽トラックがコンビニに突っ込み、店長の石橋昇流を轢き殺した事故。加害者の落井はアクセルとブレーキを踏み違えたと供述し、認知症の疑いがあるため責任能力が問われる状況で、警察は事故として処理する方向に傾いている。
律は高齢者運転問題をテーマにした特集記事のため取材を進めるが、次第に違和感を覚える。被害者・昇流の父親は補償金のことばかり気にし、遺族の態度や昇流の人柄にも問題があったことが浮上。一方、加害者側の落井が住む埜ヶ谷村を訪ねると、村人たちの反応が不自然に過剰で、何かを必死に隠しているように見える。村長や関係者は落井の認知症を強調するが、律の疑問に対して露骨に動揺します。
取材を深めていく中で、律は村の過去や人間関係に迫ります。村人たちは互いに支え合い、苦しみを分かち合うような結束が強い一方で、被害者・昇流は過去に村や村人に対して深刻な悪行を働いていたことが明らかに。
事故は単なるや認知症による操作ミスではなく、落井が意図的に起こした、事故に見せかけた復讐だったという衝撃の真相に辿り着く。落井は認知症ではなく、村全体の苦しみや自身の人生の積み重ねから、昇流を「裁く」ような形で車を突っ込ませた。
律はジャーナリストとしての「真実を報じる義務」と、人間としての「良心」や村人たちの苦しみを理解した上での「これ以上被害を出さない」という判断の間で激しく揺れる。これがタイトルの「震える天秤」らしい。
単純な老人の交通事故。それが辿っていくと、とても深い深いお話になっていくという、ミステリーあるあるの、どんどん先にいきたい症状にかられる、そんな作品でありました。
6月12冊目_2026年93冊目