年金だけでも暮らせます/萩原博子

 本書は銀行や証券会社が一時期盛んに煽っていた「老後資金2,000〜3,000万円必要」という不安商法に明確に警鐘を鳴らし、年金を中心とした現実的でリスクの低い老後生活を送る方法を提案しています。

 金融機関の投資ブームに流されず、公的制度を正しく活用し、生活を工夫すれば、年金だけで十分に暮らしていけると主張しています。

 まず、年金制度は破綻しないと強調。確かに負担増や支給開始年齢の引き上げはあり得るが、税金で半分程度が賄われており、最低限の給付は将来的にも守られるとの見通しを示しています。厚生労働省が公表する数字のトリックに注意しつつ、過度に悲観的になる必要はないと述べています。

 国民年金が払えない場合は免除申請を積極的に行うべきで、免除期間中でも遺族年金や障害年金の保障は一部残る点も重要。また、60歳からの繰り上げ受給を検討するなど、健康に気をつけながら制度を上手に使う工夫を勧めています。

 生活費については、現役時代よりレベルを下げて暮らす覚悟を今から持つことが大切だと指摘。理想は住宅ローンを完済した持ち家で、無駄な支出、特に民間保険を徹底的に削減すること。

 夫婦二人で老後資金として1,500万円程度(目安)を退職金などで確保できれば、年金だけでやりくり可能というのが著者の現実的な試算です。子どもが独立していれば生命保険などは最小限で十分であり、預貯金で資産を守りながら生活を整えることを推奨しています。

 投資に関しては、特に50歳以降は極力避けるべきだと強く警告。NISAやiDeCo、インデックスファンドなどに老後資金を突っ込む行為を「ギャンブル」と位置づけ、手数料で金融機関が儲かる仕組みや、損失が出たときの危険性を指摘します。

 退職金は預貯金で堅実に守り、余裕資金の範囲でしか投資を考えないようアドバイス。医療や介護費についても、日本の高額療養費制度や公的介護保険を活用すれば大きな負担にはなりにくいと説明しています。

 全体を通じ、夫婦で暮らす方が経済的・精神的に有利であることや、企業年金・厚生年金の仕組みを正しく理解することの重要性を説いています。そして20年後、30年後の日本は予測不能だからこそ、過度なリスクを取らず、今から生活設計を整えておくべきだと結論づけています。

 本書の最終的なメッセージは、金融機関の不安煽りに乗らず、年金制度を信じて生活をミニマムに整え、退職金や貯蓄を堅実に守れば、年金だけ(プラス少額の蓄え)で老後は十分に暮らせるというもの。特に持ち家があり、夫婦で1,500万円程度の資金があれば現実的だという安心感を与える内容となっています。

 中間層や公務員・大企業退職者向けの現実味が強い一方、自営業や退職金ゼロ世帯には厳しい面もあると指摘されますが、「老後不安を煽られるな」という警鐘は、老後の不安を感じでいる人には、少し安心感を得られる内容となっています。

 わたしは経営者なので、死ぬまで稼ぐものだと覚悟はしています。そして「稼げる=事業継続」が最低限の条件になります。事業主に対して「うらやましい」という感情を持つ人は多いかも知れませんが、この「事業継続」ということが「とても大変なんですよ!」という、そんなアピールをして本書のアウトプットを終わりたいと思います。(笑)

6月10冊目_2026年91冊目