染井為人さんはAudibleをめくっているとよく出てきますが、「正義の申し子」を2024年の12月、「悪い夏」を2022年の7月に読んだアウトプットしかなかったので、数も少ないし久しぶりということもあり、久々に手にとってみました。
本書の内容に入る前に「悪い夏」はよく覚えています。夏にウォーキングしながらKindleの読み上げで聞いたのですが、「終わるまで歩こう」と決めたのですがなかなか終わらず13kmくらい歩いたのを思い出しました。(笑)
長年ひきこもっていた19歳の平本僚太(中学1年から7年間部屋)と、44歳の下田大知(ブラック企業で心を病み、20年近くひきこももり)の家族は、藁にもすがる思いで新宿の「リヴァイブ自立支援センター」に相談します。
センターと高額(年間800万円規模)の契約を結び、二人を強引に自宅から引きずり出し、熊本の山奥にある研修施設へ連れて行かれます。施設にはすでに50代の竹之内、40代の亜弥子、20代の玲という3人のひきこもりがおり、5人は元警察官が関わる施設で囚人のような生活を強いられます。
施設長はプロレスラーのような巨体の大女・辺見未知瑠で、容赦ない暴力・暴言、養鶏場での過酷な無償労働、家族への連絡の厳格な監視などは日常。希望のない監獄のような日々が続き、5人は互いに口をきくことすら恐れて孤立していきます。
しかし、積もり積もった理不尽と恐怖が限界を超えたある嵐の夜、5人は衝動的に施設長の未知瑠を殺害し、庭に埋めてしまいます。この「絶対に共有できない秘密」を持った瞬間、バラバラだったともに過ごす仲間の間に強烈な連帯感が生まれます。
大知が冷静なリーダー(隊長)としてまとめ、僚太の意外な特技「声真似」が隠蔽工作で大活躍します。本部からの電話で死んだ未知瑠の声を完璧に演じ切り、施設の運営を偽装し続けるスリリングな日々が始まります。
彼らは施設を調べる中で、過去に「自殺」として処理された入所者たちの遺書や業者の闇を発見。単に隠れるだけでなく、巨大な悪徳業者に反撃を仕掛ようと企てます。偽の立てこもり事件をでっち上げ、警察をも巻き込んだ大胆な作戦を実行し、社会から「いらない人間」と見なされてきた5人が、初めて自分たちの人生を掴み取ろうとします。
極限状態で生まれた歪だが本物の「家族」のような絆、笑いや食事を通じた人間らしい日常、互いの過去の告白などが描かれ、前半の胸糞悪く息苦しい描写から一転、後半は痛快でサスペンスフルな逆転劇といった感じでしょうか。
10年後のエピローグでは彼らの結末が明かされ、犯罪という重い事実に伴う複雑な感情と、どこか希望や清々しさを感じさせる余韻で締めくくられます。
ひきこもりたちを援助する団体といえば、私の世代で必ず思い出すのは「戸塚ヨットスクール」でしょう。そんな内部を垣間見れた様な気がします。なにかその手の関連本でも読んでみようか。そんな風に思わせてくれる一冊でありました。