垣谷美雨さん、アウトプットするのは16冊目。もう、完全にファンのレベルといっていいレベルです。(笑)著者の作風として「もし、◯◯だったら・・・」的なものが多いのですが、本書もそんな設定の物語です。
夫の浮気を疑う主婦とその「浮気相手」とされる若い女性が、謎の老婆によって身体を入れ替えられてしまうという、そんなもし、〇〇だったらというストーリーです。互いの立場を体験することで、家族・仕事・人間関係の価値を再発見するホームドラマ&コメディ要素の強い作品で、2013年に川口春奈・鈴木砂羽主演でドラマ化もされたらしい。
39歳の平凡な主婦・小松原菱子は、優しく真面目だと信じていた夫・麦太郎(42歳、大東亜製粉営業部パスタ課長)の浮気を疑い始めます。きっかけは麦太郎のパソコン閲覧履歴から見つけた「星見のひとりごと」というブログ。内容から夫を思わせる「ムギ」という人物が出てくるため、確信した菱子は夫を尾行し、若い女性・山岸星見(20歳、夫の部下の派遣社員)とマンションに入る姿を目撃します。
離婚経験のある知人のアドバイスに従い、菱子は星見を公園に呼び出し、手切れ金30万円を渡して夫と別れるよう要求します。しかし話し合いは口論に発展。そこへ突然、真っ赤なロングドレスを着た薄汚れた老婆が現れ、「互いの気持ちが芯まで分かったら元に戻る」「物事は相手の立場に立って考えろ」と言い、菱子と星見の中身を入れ替えてしまいます。老婆は九州弁でまくし立て、神様と話せる不思議な存在として物語に絡みます。
入れ替わり後の生活では、菱子(星見の体)は派遣社員として夫の会社に出社。家事のプロとして仕事に積極的に意見を出し、麦太郎の意外に仕事熱心で部下思いな姿を見て惚れ直す一方、社内の再編や人間関係の複雑さも知ります。星見の母・史子が金銭的に頼ってくる苦労も体験します。
星見(菱子の体)は、主婦業に大苦戦しつつ、PTA活動や学童保育のパートに挑戦。凝り固まったPTAの常識に真っ向から異を唱え、いじめ問題を抱える母親の相談に乗るなど、菱子ではできなかった行動を取ります。娘・実花の不良先輩(三上)への片思いトラブルを解決したり、息子・真人との関わりで家族の絆を実感します。
入れ替わり生活の中で、麦太郎は実は浮気などしていなかったことが判明。休日出勤と言っていたのは、部下(星見や石黒)の正社員試験勉強会を開くためで、家族に心配をかけないための優しさだった。菱子は自分の早とちりを恥じ、夫への信頼を深めます。さらに、姑から自宅交換の提案が出ますが、舅の草履職人としての仕事場問題を星見(菱子の体)が毅然と拒否するなど、家族の事情も動きます。
結末ある日、再び老婆が現れ、菱子と星見は元の中身に戻ります。元に戻った世界には変化が生まれていた。PTAの雰囲気は柔軟になり、いじめ相談などの人間関係が前進。星見の母・史子は働き始め、家族的なつながりを回復。菱子が会社で提案したパスタソースが商品化されるなど、仕事面でも成果。星見は派遣を辞め、意外な道を歩み始めます。
本書では「相手の立場に立ってみる」ことの大切さ、家族や仕事の「当たり前」の価値、入れ替わりを通じてお互いの欠点や長所を補い合う人間関係の温かさをとても感じさせてくれました。
前述したように著者の作品は何冊も読んでいますが、前書同様、軽快で笑える場面が多く、読後感はとても爽やかな感じにさせてくれます。これからも著者の作品は読み続けることでしょう。(笑)