ユーチューバー / 村上龍

 特に村上龍さんがファンというわけではないけれど、昔から対談番組とか、カンブリア宮殿みたいな、メディアによく出ている印象で「顔が良く見える」し、言わずとしれたヒットメーカーなので、最低限は読んでおこう、そう思い読んだのが次の4冊です。いっぽ

・テニスボーイの憂鬱
・コインロッカー・ベイベーズ
・69 sixty nine
・限りなく透明に近いブルー

 4冊ともだいぶ前の本ですが、とても有名なので題名を知っている人は多いのではないでしょうか。本書は2023年の刊行と、けっこう新し目です。そして、関連する4つの短編エピソードから成り立っています。

 舞台は主にコロナ禍の都内高級ホテルのVIPルーム。登場人物たちの淡々とした交流と回想が描かれています。全体の中心となるのは、70歳になった著名な作家・矢崎健介(村上龍自身を強く思わせるキャラクター)。

 若くしてデビューし成功を収めた彼が、ホテルで出会った自称「世界一モテない男」と、その周辺の人々との関わりの中で、過去を振り返っていく。

 矢崎健介はホテルで出会った「世界一モテない男」から、YouTubeチャンネルへの出演を懇願される。興味本位で快諾した矢崎は、カメラの前でこれまでほとんど明かさなかった女性遍歴を語ることになる。

 18歳の頃から現在に至るまでの、登場しては消えていった女性たちとの濃密な関係、セックス、別れ、死や行方不明になった人も含めた思い出を振り返る。

 老境を迎えた作家の回顧、女性との関係が創作や人生の原動力だったこと、現代のYouTubeというメディアを通じた「語り」の意味、そして「自由」とは何かを静かに問いかける内容でございました。

 村上龍の初期作品の「限りなく透明に近いブルー」など。ワタクシもそのへんは読了済みなので、それらを彷彿とさせる赤裸々な性描写が、高齢のなった現在の視点で再び描かれている点がとても印象的でございました。

 ほぼ実体験を元に書いているのだろうと思われる、女性たちとの濃密な振り返り。前に読んだ4冊は、リアルで感じ取れる若者たちのハチャメチャという感じでしたが、本書は老年になってから振り返った、美化もあれば後悔もありと、それを今どきのユーチューバーに絡めて行くあたりは、お見事でございました。