世界インフレと戦争_恒久戦時経済への道 / 中野剛志


 経済の仕組みはそれなりに理解しているつもりでしたが、本書を読んで改めて、インフレについて考えさせてもらう機会を得ることが出来ました。

 インフレの要因には主に2種類あり、需要側に原因があるインフレを「ディマンド・プル・インフレ」、供給側に原因があるインフレを「コスト・プッシュ・インフレ」といわれています。

 現在、日本に起きている現象は、円安を起因とする「コスト・プッシュ・インフレ」でしょう。私がよく引用するのは「ウクライナは小麦輸出大国」だったので、ラーメンが高くなったと言っています。ウクライナから小麦を直接輸入していなくても、小麦を輸出している国は、その量をコントロールしようとする力が発生します。実際、インドは小麦の輸出を禁止しました。

 日本は昔から「内需拡大」、そんな政策を掲げながら、実際は安ければどこからでも持って来る。そんな経済になってしまいました。

 私は食料系の本もたくさん読んでいますが、酒の席などで人に話したとき、びっくりされることがあります。岩手はブロイラー王国と言われ鶏肉は100%自給していると思っている人が多いでしょう。しかし3〜4割程度、ブラジル産が流通しているといわれています。

 こんなに岩手県でブロイラーを飼育しているのに、地球の反対側から輸入しても、利用する価値があるくらい、鶏肉がある程度流通しているのは、それくらい安いのです。ちなみに味は、塩で焼き鳥にするのは無理なくらい、クサいといわれています。

 話はそれましたが、内需拡大を政策と掲げるなら、国内の供給も拡大する政策を掲げなければダメなのではないか。今回、インフレに特化した本を読んで、そんなことをとても思わせてくれました。

 財務省の本は10冊以上読んでいますが、本書でも「財務省の愚策」は出てきます。(笑) ⁡税は財源ではないとか、⁡自国通貨だて国債はデフォルトしないとか、⁡政府の支出が先にやるべきだとか、私が学んだ財務省理論が結構出てきました。(笑)

 ⁡政府は無から信用創造で貨幣を産むことが出来る。1万円札の製造コストは18円。通貨発行益はどこに消えるのか。

 日本が戦争に巻き込まれるとか、戦争にならなくても台湾有事など。日本の周辺でなにか起きるかも知れない。そんなとき、インフレ程度ならまだ良いが、どんなにお金を積んでも食料を調達出来なくなるかも知れない。それは飢え死にを意味します。

 先日読んだ「世界で最初に飢えるのは日本_食の安全保障をどう守るか / 鈴木宣弘」を、とても思い出させてくれる本書でありました。

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