硝子の塔の殺人 / 知念実希人

 Amazonの紹介文にはこう書いてあります。

 雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。この館で次々と惨劇が起こる。館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。さらに、血文字で記された十三年前の事件……。謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。著者初の本格ミステリ長編、大本命!

 登場人物は次のとおりです。

一条遊馬:神津島の専属医
碧月夜:名探偵
九流間行進:ミステリ小説家
加々見剛:刑事
酒泉大樹:料理人
神津島太郎:ミステリーを愛する大富豪で、硝子の館の主人
巴円香:メイド
夢読水晶:霊能力者
左京公介:編集者
老田真三:執事

 こんな奴らが、パーティーをするとか案内して集められて、山奥の雪崩ために陸の孤島になった、硝子の塔で密室連続殺人が次々と発生します。

 これは、トリック、ミステリ好きには、たまらなく面白いでしょう。と、いうのも、起きること、起きることに、あの作品の中でのトリックではとか、あの作品のこいつならとか、いちいち引用が入ります。著者も何冊も読んで読み込んでいるんだろう。そんなことをとても感じさせてくれる内容です。

 終わりそうでの、どんでん返し。それを、何回も食らう感じでしょうか。しかし、冒頭の殺人発生後、警察を呼んだら雪崩の影響で3日も警察が来れないというクダリがあるんですが、除雪をするものとして、それがとても違和感があった。

 そもそも、雪崩の処理など、3日もかかることはほぼない。(笑) 更に3日で終了するなどと断言することは無いはずです。この硝子の塔の設定は、袋小路の設定です。峠の様にあっちからもこっちからも状況を確認できて、距離感がわかるなら、時間を特定するかも知れないが、奥の状況がわからないのに、3日で行けるなんていう、そんな設定にとても違和感がありましたが、それは普通の人は感じないと思うので、無視してください。(笑)

 さらに、所有者の神津島太郎は大富豪で、この村だか市だかの名士で、税金をたくさん払っているというクダリもあったのですが、そんな人が住んでいるんだったら、行政の除雪の要請圧力もすごいだろうから、3日もかかるなんて言わないだろう。そんなことも重ねて思いました。(笑)

 出だしで除雪の違和感を持ったまま、読み進めましたが、それを打ち消してくれるほど、すばらしいミステリでありました。本書の中でたくさん出てくる、本格ミステリの有名作。ほぼ、読んだことがなかったので、なにか読んでみようと思います。