先日のネットニュースで、ラオスで人類未到の洞窟を探検した功績により、著者が植村直己冒険賞を受賞したことを知った。著者の大ファンだと飲むたびに語る友人がいたこともあり、せっかくなので本を読んでみよう。そう思い本書を手にとってみました。
本の紹介でも引用していますが、「オレは洞窟に出合うためにこれまで生きてきた。もし洞窟に出合えなかったら、どんなダメな大人になっていただろう。そして、人生の全エネルギーを洞窟探検に注いでいる。洞窟探検ほど面白いものはない」と書かれています。
幼少期のやんちゃっぷりから、建設業を起業し、登山に興味を持ち、洞窟にのめり込んでいく様子がとても詳細に語られています。
中学生時代、電車にパチンコで小石を打ってガラスを割り、警察から出頭要請を受けたとか、ハチャメチャ具合がスゴイですが、なんとか更生したようです。笑
21歳で建設業を起業し、現在も社長をやっているということで、ホームページをみたら直通の携帯電話まで載せてありました。探検中に仕事依頼の電話が入ったこともあるらしいですが、同じ建設会社をワタシもやっていますが、とても真似できない芸当です。(笑)
著者の最初の大きな成功体験といっていい出来事が、岩手県民としてとても印象的なことが書いてありました。
洞窟仲間から「今度、安家洞に行くけど、吉田くんもどう?」と聞かれ二つ返事でOKする。1997年当時、安家洞は8km位の長さがあることがわかっており、日本一長い洞窟として有名だったが、一番奥に土砂が堆積している場所があった。
砂山を掘って先に進んでみることになったが、工事現場で働いているという理由で、年長のメンバーを差し置いて、著者が穴掘りリーダーに任命された。5日目の作業を終えて宿に戻ったとき、著者以外の全員、「もういいんじゃないか」と言いはじめるが、「あと1日だけお願いします! あと1日だけ掘らせてください!」と懇願し、次の日、砂山の向こうに空間を発見する。
その後2〜3年ぐらいかけて砂山の奥に広がっていた未踏の空間を測量したところ、5kmぐらい続いていることが判明し、安家洞はもともと日本最長の洞窟だったのだが、このときの新洞発見によって総測線距離は13kmとなり、その記録をさらに伸ばした。
その「プラス5km」に著者の穴掘りが貢献したかと思うと胸がいっぱいになったという。この安家洞での経験が、著者の洞窟探検家として大きな糧になったことは間違いないと書いてありましたが、それが岩手県の岩泉町というのが、とても親近感をもたせてもらいました。笑
最初の大きな成功体験について書きましたが、それ以外、本書は盛り沢山です。自分のイメージしていた洞窟は、横穴のイメージでしたが、たて穴から始まる洞窟も、もちろんあるわけで、そこをロープで降りていく様子など、文章を読んでいるだけで下半身がゾワッとするような感じというか、疑似体験をさせていただきました。
本書を読んで、とても楽しめたし、知らない分野を知ることもできました。加えて、洞窟探検というニッチな分野を追求していくことにより、社会に貢献していく著者をとても尊敬できましたが、本書を読んで疑似体験もできたので、ぜったい洞窟探検はしたくない。そんなことを思わせてくれる本書でありました。笑
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