都内で暮らしている、恋に臆病なイズミ。引っ込み思案なのは誰にも明かせない心と体の「傷」があるから。そんな彼女をいつも見つめているリュウキン(金魚)のユキ。ひとつ屋根の下に暮らしながら言葉を交わすことはないけれど、イズミへの思いは誰よりも強い。家主と金魚の間に、新たな男の存在が加わり、ユキの気持ちは変化していきます。
金魚目線で展開する、アパートに住む飼い主の女性の物語です。金魚目線というのがとても斬新ですが、逆に金魚目線のせいなのか、切ないというか苦しいというか、そんな感じがより引き立っている印象です。
金魚がお祭りの金魚すくいで、イズミに持ち帰られる様子や、小説にはありがちですが、金魚がむかしイジメを受けていた様子や、水槽の水を変えてもらったあとは、しばらく頭痛がするとか、よくここまで考えつくものだと関心させられました。(笑)
読書メーターのレビューにこんなことを書いている人がいた。
私事ですが、先月、卵から孵した金魚が7歳で亡くなったので、金魚目線でこんなこと書かれたら、泣いちゃうわ…と思って読んでました。私の金魚も私の愚痴をいっぱい聞いてくれていただろうと。お話の内容的には、恋愛系はさほど没入できないので。
7年もかわいがった金魚が死んだあとに、こんな本を読んだら、さぞかし泣けたことでしょう。金魚に限らず、犬や猫などペットを飼っている人は、自分から見たペットだけでは無く、ペット側からみえる自分について、想像させてもらえることでしょう。
金魚の頭にハート型の斑点があり、それが原因でいじめられますが、ユキはその斑点を気に入っています。「違い」は「嫌い」にも「好き」にもなる。
私も含めて、様々なコンプレックスを持っている人は多い。しかしそのコンプレックスは「嫌い」にも「好き」にもなる。そして「弱味」にも「強味」にもなると考えれば、なんか勇気をもらえる1冊でありました。
2月22冊目_2025年33冊目