こんな一節がありました。
通信手段のない遠隔地、たとえば離島や山岳地帯で起きた事件や遭難などで、記者が新聞社に原稿や写真を送る方法として伝書鳩が重宝したのだった。具体的には、事件現場に記者が鳩を五羽くらい連れていく。そして原稿を小さな筒に入れて鳩の足にくくりつける。写真も同様に小さな筒に入れて背負わせたようだ。一羽だけでは無事社にたどり着けるか不安だから、三羽くらいに同じ原稿原稿や写真を託した。当時、新聞記者は新聞社の窓から空を見上げ、まだかまだかと鳩の現れるのを待ったという。この鳩が数々のスクープをもたらした。昭和20年代半ば頃までは、盛んに行われていたというから驚きだ。そんなことを知ったところでどうなるというものでもないが、知る前と知った後では、世界が少し違って見える。天上につながる長い階段があるとしたら、一段上に昇って、その分、下界の見晴らしがよくなった、と言えばいいだろうか。だから、学生時代より中年になったいまのほうが、見晴らしがよくなっただけに、もっと上に昇りたい、もっといろんなことを知りたいという気持ちが強くなっている気がする。この「知る」ことの楽しみを知ってしまったからには、読書をやめろと言われても、いまでは遅すぎる。
知れば知るほど、知りたくなる。
まさにソクラテスの唱えた「無知の知」です。
「無知の知」とは自分に知識がないことを自覚するという概念で「自分に知識がないことに気づいた者は、それに気づかない者よりも賢い」ということを意味するという。「不知の自覚」と表現されることもある。
私も読書はたくさんしている方だと思いますが、電子書籍ばかりなので、著者の本に関する愛情というかほぼ執念にまで達している行動と思想には、ただただ仰天する内容です。
年間3000冊本を購入するという。
本を読むために旅行するという。
古本屋にこだわりネットでは買わないという。
書斎は男の戦場だという。
人に本は薦めないし、薦められても読まないという。
著者は書評家、そしてライターらしいが、これほどまで読書を極めているのか。まさに圧巻です。私はこの域まで行くには、ほぼ不可能だとは思いますが、本書のエッセンスを少しでも参考にして、これからの読書人生を送ろうと思います。笑
07 th in October / 267 th in 2023