日本国民の誰でもが知っていると思われる与謝野晶子。オーディブルをめくっていたら出てきたので、そういえば何も読んだことが無いと思い、手にとってみました。
大正時代に発表されたエッセイで、当時の女性の地位や道徳観に対して鋭い批判を投げかける作品のようです。
女性の貞操が男性社会によって一方的に定義され、強制されている。著者は、貞操が女性にとって「道徳的義務」として押し付けられていることに強い疑問を呈し、それが女性の自由や個性を抑圧する道具となっていると指摘しています。
たとえば、「貞操は女性の人間性を奪うもの」と述べています。現代でも、ジェンダーに基づく不平等や偏見が完全になくなったわけではありませんが、100年以上前にこれほど明確に問題意識を持っていた彼女の視点は、先見の明があったのかもしれません。
与謝野晶子は詩人としても知られていますが、このエッセイでも感情的かつ力強い言葉遣いが印象的です。「私は私の肉体と精神とを共に私の所有物と信ずる」など、自己決定権への強い信念が伝わってきます。
単なる主張を超えて、女性としての誇りと独立心を象徴しているように思い、読んでいて、彼女の内に秘めた情熱がひしひしと感じられました。
一方で、当時の社会状況を考えると、彼女の意見がどれほど過激に映っただろうかと想像もさせられます。大正時代はまだ封建的な価値観が根強く残る時代であり、女性が公にこうした意見を表明することは、大変な勇気と信念が必要だったのかもしれません。
「処女の貞操観」と「妻の貞操観」。加えて「未亡人の貞操観」というキーワードがあった。伝統的な日本社会において、夫を亡くした女性が再婚せずに亡夫への忠誠や贞節を守ることが美徳とされる観念ですが、処女と妻の貞操観は理解できるが、「未亡人の貞操観」はさすかに現代ではさすがに辛いのではないだろうか。
とりあえず「貞操」という普段あまり使わないキーワードについて本書であらためて学べたことは良かったと思います。今度、スナックてついたホステスの方に「あなたの貞操観を教えて下さい!」と質問してみようと思います。笑
3月12冊目_2025年60冊目