母親の言いなりになって生きそして愛されていた主人公。母を慕う反面、娘に愛情を注ぐことが出来ない葛藤。その母親を失う出来事と娘の関係性。
自分は父と母を選んでこの世に生をなしたので、母を慕うのは当然だと思っていた。しかし娘は自分たち夫婦を選び、この世に生まれて来たのに、自分をなぜ慕ってくれないのか。
そんな母と娘に訪れる悲しい結末。そこにいくまでの母と娘の中で繰り広げられる、心情の変化や身の回りで起こるエピソードに、とても胸が苦しくなってくる作品でありました。
著者のインタビュー記事を見たら、こんなことが書かれていた。
ずっと愛を注がれてきたからこそ“自分がされてきたことを娘にどうしていいかわからない女性”と、その“母からの愛を求めてきた娘”の関係性を中心に描こうと思いました。こういう母性を与えられない女性もいるのではないか、そこに注目してほしくて主人公をつくりました。
誰かが決めた“母性”が自分の中にあるか問うのではなく、自分が子どもとこう向き合おうというその気持ち、自分の中から生じるものが母性であり、親となった気持ちだと思うので、ほかの人の価値観を自分の中に取り込もうとしなくていいのではないかと思います。
本書を読んだ印象はとても胸が苦しくなっていく感じがしましたが、インタビュー記事をよんで少し腑に落ちた。笑 自分の決めつけや正しいと思いこんでいることは、絶対ではなく、自分のなりたいようになればいい。自分の意思こそ一番尊重するべきなのではないか。そんなメッセージ性があるようです。
映画化されているようですが、この新鮮な気持ちを忘れないようにするため、映像は見ないようにしようと思わせてくれる、そんな本書でありました。
3月19冊目/2024年64冊目
190dai.com
インタビュー記事
https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pZ2O7pOJ7Y/