関係人口 都市と地方を同時並行で生きる / 高橋博之

 著者の本は、『都市と地方をかきまぜる 「食べる通信」の奇跡』、『だから、ぼくは農家をスターにする 「食べる通信」の挑戦』、新井和宏さんとの共著『共感資本社会を生きる 共感が「お金」になる時代の新しい生き方』に続き4冊目。

 Instagramで『都市と地方をかきまぜる 「食べる通信」の奇跡』のアウトプットをしたら、著者から直接コメントを頂いたこともあれば、著者の講演会の後の懇親会で、お話をする機会をいただいたこともあるので、すかさず手に取らせていただきました。(笑)

 現代日本が抱える深刻な課題として、都市部を中心に人々が孤立し、他者との深い交歓や自然との交感が失われた結果、「生気」つまり生きる活力が著しく欠如していることを指摘しています。

 定住中心の生活が所有や法を過度に重視するあまり、人生の自由度を狭めていると著者は説いています。そこで著者が提唱するのが「関係人口」という概念。

 特定の地方地域と継続的に関わりを持ち続ける人々を指し、「観光以上、移住未満」の距離感で都市に住みながら地方を訪れ、支援や交流を続ける存在。

 関係人口は地方創生の即効性のある「特効薬」ではなく、じっくりと効いてくる「漢方薬」のような役割を果たし、長期的に地域を活性化させるのだという。

 狩猟採集時代のような非定住の暮らしを現代的に復活させ、複数の拠点を持ち、住民票さえ複数持てる社会を実現すれば、都市のゆとりと地方の活気を両立できる。

 人口を地域間で「シェア」する考え方を通じて、東京一極集中と地方過疎という二つの問題を同時に解消できるというビジョンです。

 2024年の能登半島地震の被災地での実践事例も紹介されており、関係人口が復興支援で果たす大きな役割が具体的に描かれています。外部からの継続的な関わりが地域の当事者意識を高め、従来の支援とは異なる新しい形を生み出している、著者自身のとてもアグレッシブな行動には、頭が下がる思いです。

 さらに、関係人口を政策的に「見える化」し、二拠点居住などを後押しすることで、社会性と経済性を両立させ、都市と地方の分断を超えた共創を可能にすると主張。最終的に、関係人口を増やすことで地方に活気を、都市にゆとりを与え、日本全体を持続可能な共生社会へと導くことができるという。

 都市と地方を「かきまぜる」ことで、にぎやかな過疎や多様なライフスタイルが生まれ、真に豊かな生き方が実現すると著者は情熱的に訴えています。現場での豊富な経験と行動力を基にした本書は、地方創生の新たな視点を提供し、読み手に具体的な行動を促す力強い本書といって良いでしょう。

 私は都市に住みたいとも思わないし、これから移住することはないだろう。このまま地方で人生を全うすると思う。自分の住んでいる地域は、人口も減れば過疎化、高齢化もとても激しいといってよい地域です。

 著者のいう「一流の田舎」になり、どうやれば都市との交流を深めることができるのか。立場上、このままでは建設業は衰退する。「地域を守る建設業」とか、カッコいいことばかり言っていないで、どうやれば「一流の田舎」になれるのか。いつもですが・・・酒でも飲みながら考えようと思います。(笑)