御嶽山噴火 生還者の証言 あれから2年、伝え繋ぐ共生への試み / 小川さゆり


2014年9月27日午前11時52分。

御嶽山が突然噴火。

9月最後の土曜日、好天と絶好の紅葉シーズン。

登山者でにぎわう昼どきの最もゆったりした時間帯。

死者58人、現在も5人の行方不明者。

戦後最悪の火山事故。

頂上直下で被災した女性山岳ガイドが語る、

懸命の脱出劇と、山上の過酷な状況が綴られています。

下山し帰宅後見るテレビのニュース。

自分はあそこから、生きて帰ることが出来たという、

不思議な感覚と、どこか他人事のような、

当事者ではなければ、語ることの出来ない、

そんな心情が綴られています。

自分は山登りのプロとして、

山の様々な想定は出来ていたはずなのに、

「もし噴火したらどうするのか?」

そんな想定は出来ていなかった。

噴火の翌日から、著者の意識は確実に変っていく。

噴火に遭い、山から生きて帰るという当たり前に感じていたことが当たり前ではないと痛感していたという。

そして、登山者が噴火を身近に感じ、活火山を登るとき、噴火のリスクを頭の片隅にでも置いてほしい。そうすることが、人間が予知できない、阻止できない噴火から、被害を最小限にとどめる「減災」に繋がっていく。そして人間と自然との共生に繋がってほしいと思ったという。

著者は自分が生還出来た理由の一つに「多数派同調バイアス」に従わなかったことを、あげていた。

多数派同調バイアス(majority synching bias):どのように行動してよいか迷ったときに周囲の人と同じ行動を取ることが安全と判断する心理傾向。

まさに「津波てんでんこ」に通じるものがあるのでは無いか。そんなことを考えさせてくれる1冊でありました。

25 th in July / 208 th in 2023