朽ちないサクラ/柚月裕子

柚月裕子さん、アウトプット7冊目。私の読書歴の中でもトップ10に入る作家さんになってしまいました。このまま全部、読破したいと思います。(笑)

本書の主人公は、米崎県警広報広聴課に勤める事務職員・森口泉(29歳)。彼女が親友の不審死をきっかけに、警察組織の内部事情や闇に迫っていくサスペンスストーリーです。

米崎県平井市で、女子大生・長岡愛梨がストーカー被害に悩まされていた。愛梨は執拗なつきまといを受け、両親とともに平井中央署生活安全課に被害届を提出しようとする。しかし、担当の警察官(辺見巡査長など)は「安西という男が犯人である確証がない」として受理を先延ばしにし、被害届をすぐに扱わなかった。その間、生活安全課の職員たちは慰安旅行に出かけていた。

結局、愛梨は神社の長男・安西に殺害されてしまう。この警察の怠慢と不手際が、地元紙「米崎新聞」のスクープ記事で大々的に報じられる。記事は、被害届の不受理と慰安旅行の事実を暴き、県警全体に大きな非難が殺到した。

県警広報広聴課で市民からの苦情対応などに追われる森口泉は、このスクープに強い不安を抱く。なぜなら、彼女は高校時代の親友で米崎新聞の県警担当記者・津村千佳に、うっかり平井署の慰安旅行情報を漏らしてしまい、「オフレコ(記事にしない)」と口止めしていたからだ。

千佳から「話したいことがある」と連絡があり、泉はイタリア料理店の個室で彼女と会う。千佳は記事のネタ元が自分ではないと強く否定し、「この件には何か裏があるような気がする」と告げる。しかし泉は疑いを完全に拭えず、千佳を信じきれないまま別れる。

その約1週間後、千佳の遺体が川で発見される。事故や自殺に見せかけられているが、肺の中の水の状況などから、別の場所で殺害された変死であることが判明。警察の捜査では泉にも疑いの目が向けられるが、泉自身は「自分が千佳を疑ったせいで彼女が独自に調査を始め、危険な何かに触れて殺されたのではないか」と深い自責の念に駆られる。

捜査権を持たない広報職員である泉は、警察学校の同期で平井中央署生活安全課に所属する若手刑事・磯川俊一と協力し、千佳の死の真相を独自に調べ始める。

県警内部では情報漏洩の犯人探しが続いており、組織全体が揺れている中、二人は事件の核心に迫っていく。

調査を進めるうちに、ストーカー殺人事件の背後に思わぬ影が浮上。安西(加害者)や愛梨の周辺だけでなく、過去の事件とのつながり、警察組織内の複雑な力学が明らかになっていく。

刑事警察とは異なる特殊な立場を持つ公安警察の存在が、物語の鍵となります。公安の「任務遂行」のために行われた隠された工作や、組織の論理が優先される「醜い闇」が次第に姿を現していきます。

広報課長の富樫隆幸(元公安刑事)や捜査一課長の梶山など、上層部やベテランたちの態度からも、警察内部の対立や「国を守るための犠牲」が示唆される。泉は捜査権のない立場ながら、粘り強く情報を集め、証言を聞き、危険を顧みずに真相を追い続ける。

物語は、単なるストーカー殺人や親友の変死を超えた大きな陰謀に到達。千佳がスクープ記事の裏で探っていた「何か」と、愛梨殺害事件は、公安警察の過去の関与(カルト教団が絡む毒ガステロ事件など)と結びついていた。

公安は組織の論理で情報を操作し、必要とあれば個人の命や正義を犠牲にする側面が描かれています。

泉は公安の在り方に対して強い怒りと疑問を抱きながらも、「きれいごとじゃ国は守れない」という現実を突きつけられる。

それでも彼女は自らの信念を貫き、事件の全容を明らかにしようとする。タイトル「朽ちないサクラ」の「サクラ」は、公安警察の通称(かつての「さくら寮」に由来)を指し、「朽ちない」という言葉は、公安という組織の不変性や、泉自身の不屈の精神を象徴している。

最終的に、泉は警察組織の闇を知りつつも、事務職員としてできる範囲で真実に近づき、自身の成長や決意を新たにする形で物語は締めくくられる。そんな物語でございました。

「公安」と聞くと、「公安委員会」程度のイメージしかありませんでしたが、本書を読んでせっかくなのでググってみました。

「警察と公安の関係性」こんなキーワードでググるとこんなことが出てきます。

警察と公安(公安警察)は、「公共の安全と秩序の維持」という同じ目的を持つ、密接な関係にあります。公安警察は警察組織の一部であり、テロ・政治犯罪・スパイ活動など、国家体制に影響を及ぼす犯罪を専門に扱う秘密主義の部門です。

警察の背後にいる、秘密主義の「公安警察」そんなことを知れただけでも、本書を読んだ価値は十分ありました。続編も読了済みですが、気が向いたらアウトプットしようと思います。(笑)