合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明 / 柚月裕子

 シリーズの前作を読んだので、そのまま第2弾に突入です。前作同様に元敏腕弁護士の上水流涼子とIQ140の天才助手・貴山伸彦が運営する「上水流エージェンシー」が舞台の連作短編ミステリーです。

  殺人と傷害以外ならどんな厄介な依頼も引き受ける二人が、再び「物理的にあり得ない」「倫理的にあり得ない」「立場的にあり得ない」といった不条理な状況に挑み、知略と大胆な手段で解決していきます。

 前作で描かれた涼子の過去事件や諫間グループとの因縁は一区切りつきつつ、キャラクターたちの内面的な深みや新たな人間ドラマが加わり、痛快さの中に切なさや感動が織り交ぜられた作品となっています。

 物語は主に三つのエピソードで構成されます。最初の「物理的にあり得ない」では、中年の男性から「中身を教えられない不明の積み荷を乗せたクルマの行方を捜してほしい」という奇妙な依頼が舞い込みます。

 涼子と貴山が調査を進めると、依頼主の古矢信之と運転手の織田洋一が絡む事件が浮かび上がる。実は彼らはワシントン条約で禁止された希少動物を密輸しており、織田が古矢を裏切って動物を独占しようと企てていた。

 動物たちはペットボトルに詰め込まれ、劣悪な環境で運ばれ、多くの個体が命を落とす悲惨な状況。貴山の怒りが爆発し、涼子は依頼主の意向を無視してマンションに踏み込み、動物たちを警察に引き渡す。

 保護された動物の中にはカラカルという希少な猫科の動物もおり、貴山が「マロ」と名付けて可愛がるようになるエピソードあり。 この話は動物密輸の残酷さを描きながら、涼子たちの正義感が際立つ痛快な解決。

 次の「倫理的にあり得ない」では、富岡総合クリニックの看護師・滝本香奈江から、離婚した元夫・安生健吾(株式会社ファイアットの社長)から息子の直人の親権を取り戻してほしいという依頼を受ける。

 表面上は離婚後の親権争いのように見えますが、実際は安生の現在の妻・香奈江の兄妹の思惑が絡む複雑な家族事情が明らかに。安生は息子を手放したものの、香奈江側は親権を奪い、さらに安生を殺害して財産を狙うような陰謀を抱えていた。

 涼子たちは事実と真実の違いに直面し、当事者に真実を告げるべきか悩むが、貴山の冷静な判断と涼子の行動で陰謀を暴き、息子・直人の幸せを守る。家族の絆や「家族とは何か」というテーマが深く描かれ、読者に感動を呼ぶエピソードです。

 三つ目の「立場的にあり得ない」では、涼子と情報交換をしている所轄刑事・丹波から、警視庁組織犯罪対策部部長・五十嵐の娘で摂食障害(拒食症)により入院中の由奈を助けてほしいという依頼が入る。

 立場上、警察関係者の家族を公に助けるのが難しい状況の中で、涼子はほぼ無料に近い条件で引き受ける。由奈の摂食障害の背景には、父親の仕事のストレスや複雑な家庭環境が絡んでおり、涼子と貴山は原因を究明しながら由奈の心に寄り添っていく。

 全体を通じて、貴山の人嫌いな一面や家族との確執、涼子の過去の傷が少しずつ掘り下げられ、二人の絆がより強固になる過程が感じられます。

 柚月裕子さん、エッセーに始まり本書で3冊目。まだまだあるようなので、他人に柚月裕子について語れるようになるため、もっと精進してまいりたいと思います。(笑)