「話が面白い人」は何をどう読んでいるのか/三宅香帆

 何を読みたいのかわからないとき、私は本屋に行くようにしています。当たり前だろうと思うかも知れませんが、基本的に私は電子書籍とAudibleしか買いません。

 KindleもAudibleも完全にアルゴリズムを見透かされていて、読欲をそそるものが目立つ様になり、じゃんじゃん読んでしまうとアウトプットをしなくなってしまうという悪い循環に入るからです。

 そんなとき、本屋にいって店内を歩き、今の旬というか本屋さんのプッシュしている感じとか、自分が読んだ本がこれくらいあるという満足感とか、そんな感じを楽しみます。そして先日本屋に行って目についたのが三宅香帆さんでした。

 著者のことを調べたら2024年6月に読んだ「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」の著者で、その本のこともよく覚えていたので、読むしかないだろう。そう思い本書は数冊目の本といった感じでございます。

 文芸評論家である著者が、自分が昔悩んでいた「とっさに面白い言葉が出てこない」という問題を解決するために編み出した実践的なインプット術をまとめた一冊です。

 会話術の本ではなく、本や漫画、ドラマ、映画などの作品をただ消費するのではなく、「鑑賞」として深く味わい、それを会話で使える「ネタ」に変える方法を教えてくれます。

 著者によると、本当に「話が面白い人」とは、エピソードそのものが派手な人ではなく、解釈が面白い人。つまり、起きた出来事の羅列ではなく、「それが何を意味するのか」「なぜそれが興味深いのか」という自分なりの視点で語れる人が強いという。

 面白い話を生み出すプロセスは大きく三つに分けられていて、まず作品から話を「仕込む」(インプット)、次にそれを自分の中で「解釈する」(加工)、そして実際に話すときにその解釈を自然に出す(アウトプット)、という流れを繰り返すことが大事だと強調しています。それを意識的にたくさん繰り返せば、無意識レベルで話が面白くなっていくという。

 著者が日常的に使っている五つの切り口を紹介しています。

 一つ目は「比較」で、他の作品と並べて違いや共通点を探す方法です。例えば似たテーマの作品を挙げて「ここが全然違う」と指摘するだけで、話に厚みが出る。

 二つ目は「抽象」で、作品の本質を一言や一文で言葉にまとめる技術。「結局これは〜の話だよね」と核心を突くと、どんな話題にもつなげやすくなる。

 三つ目は「発見」で、作品に書かれていない部分や作者が意図的に抜いたものを指摘する方法で、行間を読む視点が加わると一気に深みが増す。

 四つ目は「流行」で、その作品が今の時代や社会の空気とどう響き合っているかを語るアプローチで、トレンドに敏感な人たちと盛り上がりやすい。

 五つ目は「不易」で、時代を超えて変わらない人間の普遍的な部分を見つける視点で、どんな世代とも共感できるネタになる。

 本の前半ではこうした技術の解説と、実際に「鑑賞ノート」のようなメモの取り方を紹介し、後半では最近の小説や漫画、ドラマ、映画などの具体的な作品に対して、著者がこの五つの技術を実際に使って批評している実践例が載っています。

 後半を読むと「なるほど、頭の中でこんな思考が回っているのか」とプロセスが可視化されて非常に腑に落ちる構成です。しかもこれらの批評自体が面白く、エンタメとして楽しめる仕上がりになっています。

 さらに著者は、教養とは単なる知識の蓄積ではなく、社会や人生の「ネタバレ」をたくさん知っている状態だと定義。フィクションを通じて人間の悩みやパターンを先回りして仕込んでおけば、日常の会話で「ああ、それってあの本に似てる」と即座に返せたり、相手の話に深く共感したりできるようになるという。

 本を読めば「話が面白い人」になれるんだろうと、こんなに読書する前は思っていた。(笑) しかし、今のワタシは面白くなった実感はあまりない。(笑) 

 読めば読むほど、ワタシは面白くないやつなのではないかと思う。まさに、知れば知るほど知らないことが多いことを知る「無知の知」のようです。(笑) みなさんと会話するとき、「面白い人」と言ってもらえるよう本書を参考に精進しようと思います。(笑)