令和の若者たちを中心に爆発的に流行している「考察動画・考察記事」の現象を起点に、現代日本の文化・価値観の深層を著者なりに読み解いた一冊といった感じでしょうか。
YouTubeやTikTokで「〇〇の正解」「伏線回収」「裏設定」を解説するコンテンツが溢れ、ドラマ『あなたの番です』や小説『変な家』、アニメ『推しの子』などがその代表例として挙げています。なぜ若者たちは、作品を「ただ楽しむ」だけでなく、すぐに「正解を当てる」考察を求めるのか?
著者はその答えを「報われたい」というシンプルだが強烈な心理だと説いています。平成までは、エンタメの楽しみ方は「批評」だった。作者ですら気づいていないような解釈を自由に展開し、正解のないまま自分の感想を語る行為。
一方、令和の「考察」は、作者が意図的に仕掛けた謎を解き、明確な「正解」にたどり着くゲームのようなもの。正解がわかれば「時間をかけた甲斐があった」「報われた」と感じられる。これが若者たちの心を捉えて離さない理由だと指摘しています。
瞬間的な「好き」 → 応援・行動する対象としての「推し活」。推しが成功すれば自分の貢献が報われる感覚を得られる、萌えから推しへ変化。
何度もやり直して学ぶ成長物語より、最初から最強の転生即無双。現実での努力が報われにくい分、フィクションでは即時の成功を求める、ループものから転生ものへの変化
「こうすればうまくいく」という攻略本 より、世界の不条理を一つの陰謀で説明する。
どちらも「正解」を提示してくれる点で同じ報酬系という、自己啓発から陰謀論への変化
仕事の充実感から、安定やスキルアップのための手段化した、「やりがい」より「成長」を求める傾向。
自分で複数の選択肢を探す AI(ChatGPTなど)が唯一の最適解を探す。ググるからジピるへという進化。
様々な事例をあげて、平成から令和に掛けての若者思想の変化を、色々なエピソードも交え紹介しています。
これらすべてを貫くのは「報酬の分かりやすさ」と「最適化」の論理という感じでしょうか。プラットフォームのアルゴリズムは、ユーザーが「正解」を得て満足するコンテンツを優先的に届け、個人の独自性を削ぎ落としていく。結果として、複雑な現実や「正解のない批評」を避け、簡単な報酬を求める「報われ消費」が広がると著者は分析しています。
正解を求めること自体は悪いことではないが、それだけに依存すると、自分の固有の感想や、作者ですら思いつかないようなユニークな解釈が生まれなくなる。個人の「らしさ」が圧殺され、世界は均一化してしまう。SNS時代だからこそ「自分の頭で考える」ことが大切であると、著者は警鐘を鳴らしています。
著者の本は『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』というやつを読んだことがありますが、他にも多数著書もあるようなので、なにか違うのも読んでみようと思います。