秋吉理香子さん、「婚活中毒」「終活中毒」に続き、3冊目。同じ作家さんを続けて読むのは、著者の作風とか、ジャンルの傾向とか、そんな雰囲気が掴めるので、過去にも何度か経験しています。似た作風の感じがあれば、著者の世界観というか傾向がつかめるのは、とてもよくわからない満足感を味わえます。(笑)
物語は全5章構成で、母・杉山莉緒(40歳、専業主婦)、母の親友・優美、息子・聖将(高校2年生)、父・稲男(45歳)、ボーイフレンド・藤本雄哉(20歳、大学2年生)のそれぞれの視点から語られ、多角的 に家族の葛藤と成長を描かれています。
莉緒は高校生の息子・聖将からファミレスで突然「男が好きでボーイフレンドができた」とカミングアウトされ、大きなショックを受けます。莉緒自身、若い頃はBL(ボーイズラブ)雑誌の熱心な読者で、過激なBL漫画を自分で描いてクラスメートに配るほどの腐女子だったため、理論上はLGBTに理解があるはずなのに、自分の息子のこととなると受け入れがたく、動揺が隠せない。
親友の優美(腐女子で、過激なBLファン)に相談すると、「会ってみたら?」と勧められ、意を決して聖将の交際相手・雄哉を自宅に招きます。雄哉は一流大学に通う苦学生で、母親を早くに亡くし、祖母の介護と家事をこなす完璧な好青年。容姿も聖将に負けず劣らずのイケメンで、心優しく礼儀正しい。莉緒は雄哉の印象に圧倒され、次第に好感を抱き、二人の交際をひとまず認めるが、夫の稲男にどう伝えるかで悩みます。
優美の視点では、莉緒の相談を受けながら、自分の息子が同性愛者だったらどう思うかと考え、腐女子としての理想と、現実のギャップに直面する様子がなんとも微妙で興味深い。
聖将の視点では、カミングアウト後の母親の反応に傷つきながらも、雄哉との純粋で熱い恋愛模様が、互いに深く愛し合う様子が描かれています。
特に稲男の視点が特に印象的でした。職場でジェンダーフリー関連の部署に所属し、LGBTに理解があるつもりだったが、妻から息子のカミングアウトを聞かされると「他人事ならいいけど自分の息子がゲイなのは嫌だ」と本音が漏れ、態度が一変。
家族の将来(孫の顔が見たいなど)を心配し、聖将を傷つける言葉を投げかけてしまう。稲男の葛藤は「理解はしているつもりでも当事者になると受け入れられない」というリアルな心理を鋭く表現しています。
雄哉の視点では、聖将への真剣な想いと、自身の家庭環境(母の死、祖母の介護)が語られ、二人の関係の深さを感じさせてくれます。
ストーリーのクライマックスでは、稲男の拒絶反応が家族の危機を招き、聖将が傷ついて家出しかけるようなはらはらする展開。しかし、稲男は悩んだ末に自分の偏見と向き合い、変わる決意をします。
ユーモアを交えつつ、LGBTをめぐる家族のリアルな葛藤を描きながら、最後は笑いと涙のハートウォーミングな結末で締めくくられます。
読後感は爽やかというか、とてもスッキリする感じがする反面、当事者意識についてとても考えさせられるのが率直な感想でしょうか。稲男のいう「他人事ならいいけど自分の息子がゲイなのは嫌だ」という感情に同調した自分ではありましたが、他にもなにかLGBTに関連する本でも読んで、考えさせてもらおうと思います。