[新版]日本の地政学 / 北野幸伯

 著者はモスクワに28年間滞在し、ロシア国際関係大学を日本人初卒業した国際関係アナリスト。プーチン政権やロシアの思考を深く理解したリアリスト視点から、現在の世界情勢を地政学的に分析しています。

 世界はロシアのウクライナ侵攻以降、再び「弱肉強食」の時代に回帰した。米中間の覇権争いが本格化する中、日本は「戦勝国」として生き残り繁栄するための明確な大戦略を持つべきだ、というのが全体のメッセージという感じです。

 著者は「日本の未来は明るい」と結論づけつつ、自由世界が独裁体制に勝たなければならないと強調しています。私は地政学の本は何冊か読んでいますが、日本は地政学上、とても重要なポストにいるという、そんなことを再認識させてくれました。

 地政学上、大国の「緩衝地帯」という考えを紹介しています。自国を守るために隣国を支配しようとする。かつての日本もそうだったように、隣国を支配しそこに軍力を配備することにより、兵力が分散して失敗する。

 そのような失敗をしなければ、日本には「海に守られている」というイギリスと同じ特権があるので、現在の日本のようになっていなかったと著者は説いていました。

 2025年末現在、トランプ政権2期目や中国の軍事圧力強化など、本書で指摘されたシナリオが次々現実化しています。改めて注目するに値する本書でありました。