ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか? / 堤未果


 世界の特にアメリカのアグリビジネスのずるさと汚さ、当たり前の様に行われている遺伝子組み換えやゲノム編集。代替肉や培養肉など、上べは環境に配慮されている様なモノの本質はどうなのか。

 マネーの世界とは一見かけ離れている様な食の世界の現実は、世界のグローバル企業により投機マネーが蔓延り、実際は投資家が群がる世界。農地を買いあさり微生物の死滅する土壌を増やし続ける。

 農業者は種や科学肥料を買わされ、アグリビジネスの犠牲者になる。牛のゲップが問題だと騒ぎ、その対策すらビジネスにしようとするが、穀物を牛に食わせるという、自然の摂理と違うことはやめようとしない。

 私たちは金さえ出せば何でも買えるし食えるという、自然の世界とかけ離れた状況という現実がある。こんな不自然な状況はもう限界にきているのではないか。そんなことを考えさせてくれる本書です。

 アグリビジネスでは、資本はあらゆる策を労して食の支配を進めるが、その行動は利益を求めている。食は生きていく上の基本中の基本です。しかし日本の食糧自給率は38%しかない。食生活により10%代の人もいるという。誰がどう考えても、食料自給率を向上させないと飢えに陥る可能性は大きい。

 ウクライナにロシアが侵攻して小麦粉の値段が上がったので、ラーメンなどの麺類の値段があがった。上がるだけなら、高いお金を払うだけで済むが実際手に入れることが出来なくなったらどうなるのか。考えただけでもぞっとする様な状態です。

 漠然と子供の頃から思っていた。日本の農家は小規模で効率が悪いから、アメリカの大規模な農場で作る様な値段で敵わなくなって、輸入に頼る様になった。しかし、たくさん本を読む様になってわかったことだが、実際はそうではない。

 アメリカは完全に政府に保護された農業だということです。政府がじゃんじゃん補助金を入れて増産に次ぐ増産を促す。食で世界を制することを目的にしていたという政策がある。戦後、パン食をGHQが給食に強いたのも、そのとっかかりと言っていいでしょう。

 そして効率だけ求め抜いた土壌はもう限界になってしまった。そして時代は有機に向かなわなければならなくなった。余計な草が生えないように農薬を使用し、植物の促進のため化学肥料を注入する。土壌はもう作物が作れないほど疲弊してしまい、自然本来の土壌菌はどこかに消え去ってしまった。

 そんな状況下で、欧米に比べて日本にはまだ希望があるという。世界の中でも優れた土壌菌を有するのが日本の国土だという。列島の成り立ちのせいなのか、火山活動のせいなのか、地震が多いせいなのかわからないが、わが日本の国土は恵まれている。

 そんな恵まれている国土だからこそ、有機先進国になる可能性を秘めている。先日「いわてグリーン農業アカデミー」という、岩手県の主催するお話を聞く機会があり、「みどりの食料システム戦略」について説明をうけた。

 現在の有機農地は全体の0.6%しかないという。それを国は25%まで引き上げる施策をとった。環境の負荷低減とか綺麗事の目標を掲げているが、私のうけた印象は「いま私達が食っている食物はキケン」そんな印象です。笑

 食いたいもの、食いたい時に食える。それは当たり前ではなく奇跡的なくことであり、食を金で買えない時にはどうすればイイのか。そんな危機感をもらえただけでも十分に学びをいただける本書でありました。

5月25冊目_2024年115冊目