希望格差社会、それから: 幸福に衰退する国の20年/山田昌弘

 私は読んでいませんが、2004年に刊行された「希望格差社会」から約20年後の日本社会を、著者独自の「希望」という視点から分析した続編的な一冊です。

 本書では、平成から令和にかけての日本が「失われた30年」を経て経済停滞が続き、格差が単に拡大しただけでなく「固定化」してしまった現状が描かれています。

 就職氷河期世代の非正規雇用の長期化、親の経済格差が子にそのまま受け継がれる再生産、結婚・出産のハードル上昇など、かつて「努力すれば報われる」という希望が広く共有されていた昭和型社会の前提が崩壊した結果、若者を中心に「努力しても無駄」という諦めや絶望感が広がったと説いています。

 しかし興味深いのは、こうした現実の中で日本人の生活満足度や幸福度が、むしろ上昇傾向にあるという不思議な現象です。

 著者はこれを、格差の現実を直視するのを避け「バーチャルな世界」で幸福を補完する人々が増えているからだと分析しています。具体的には、推し活、ゲーム、SNS上の交流、ペット、二次元コンテンツなど、現実の人間関係や経済的成功を求めにくい分、お金で買える、あるいは低コストで得られる「擬似的な親密性」や「疑似達成感」に頼る傾向が強まっているためだという。

 日本は経済的には衰退し続けながらも、表面的・主観的には「幸せ」に見える社会へと移行しており、これが本のタイトルにもした「幸福に衰退する国」。

 さらに著者は「格差は拡大しただけでなく、固定化してしまった」と指摘しています。貧困の子供は貧困になりがちで、「努力すれば報われる」ではなく「努力しても無駄」の時代になってしまった。

 本書には暗い未来予測が書かれていますが「失われた30年」は40年になるのか、それとも終わるのか。明日から衆院選挙がありますが、少しだけでも政治家たちに期待してみたいと思います。(笑)