検証 財務省の近現代史~政治との闘い150年を読む~/ 倉山満

 財務省とは、国の歳入と歳出を管理する官庁、すなわち税金を集めて予算として配分する役所であり、前身の大蔵省以来、「戦後最強の官庁」として日本に君臨してきた。しかし、明治以来、大蔵省ほど絶大な力を持ちながらも注目されてこなかった組織はない。

 本書は2012年刊行ですが、財務省はデフレ不況下での増税を企んでいた。「増税やむなし」の空気が流れる中、これは本当に正しい選択だったのか。

 大蔵省・財務省の歴史にメスを入れ、百五十年の伝統を検証しながら、知られざる政治との関係、「#増税の空気」の形成過程が様々な方面から語られています。

 恒久的増税の仕掛けにより、日本は負けるまで戦争をするハメになったという思想が存在する。戦争しないために、国債はダメ。そんな思想も存在する。戦後日本の権力は、アメリカ・自民党・大蔵省主計局に集中していた。

 50年前から最終的な予算権限を握る、衆議院には振り回されっぱなしだという。池田勇人 は「国民所得倍増計画」を掲げ、強い指導力で国民を結集し、日本を復興と高度経済成長に導いた。

 そして、高度成長の申し子、田中角栄 は徐々に 大蔵省 を侵食していった。田中角栄の本を読むと必ず出てくるハナシがある。大蔵省の職員の名前や出身地、そんなことまで頭に入れ、冠婚葬祭から付け届け。とにかく #大蔵省の職員の心を掴む ことを心がけていたという。

 しかし、無制限のバラマキを続ける田中角栄を尻目に、大蔵省はひそかに増税を企んでいた。そして登場する #竹下登。大蔵省は打倒田中角栄と消費税導入で、竹下登に巨大な借りを作ってしまう。

 この本では、国債や緊縮財政が悪だという論調は少ないですが、私の印象では、この 田中角栄から竹下登という流れ。これが今の財務省の体質を築き上げたのでないか。そんな印象です。

 著者はあとがきでこのような事を記述しています。「財務省のことを書くなんて勇気がありますね」「税務署のことは怖くありませんか?」こういう事を書いている本は結構多い。それくらい、おっかない権力らしい。財務省を批判をすると、税務署がリベンジ にやってくる。

 最後はこんな言葉で締めています。明治以来、大蔵省ほど、絶大な力を持ちながらも注目されてこなかった組織はないでしょう。しかし現在、財務省は日本の歴史上、最も注目されていると言っても過言ではありません。その注目のされ方は、長期デフレ不況・大震災の最中に増税を強行しようとしている「悪の権化」としてです。

 私は批判しているわけではあります。本の内容について書いただけなので、#国家権力による制裁 という「税務署のリベンジ」は勘弁してください。(笑)