今すぐ逃げて!人ごとではない自然災害 / 金藤純子

 倉敷市真備町で、2018年豪雨で自宅と実家の浸水被害にあった著者。自らの被災体験から豪雨災害や、流域治水対策について興味を持ち、学習して行く過程とそのプロセスから、自分が知らなかった知識を知ることにより、これは、たくさんの人に知ってほしい。そんなきっかけから書かれた本書といった感じです。

 「公助」という国交省から始まるハード対策。河川の幅や堤防の高さ、ダムの役割など。どのように計画され、どのように実行されて行くのか。税金の無駄使いだと騒がれる公共事業。しかし災害が発生すると対策が不十分だと避難をされる。官側との対談も踏まえ、とてもわかり易く伝えてくれます。

 「自助」という被災者が自分で出来る備えや心構え。ハザードマップを日頃から意識して行動するだとか、いまどこでどんな豪雨が降っていれば、自分の住んでいる地域ではどんなことが起きるのか。「うちは大丈夫だろう!」そんな楽観的な考えを持っていないか。

 「正常性バイアス」という、異常事態や危険な状況に直面した際に、「大したことない」「まだ大丈夫だ」と判断し、状況を正常と認識してしまう心理的な傾向。これは、人間が普段の生活で経験する、ある程度の異常や変化に、過剰に反応しないようにするための心のメカニズムの一部で、緊急事態では、適切な対応を遅らせ、危険にさらされる原因になるという。

 「共助」という、仮に自分が「自助」出来るとして、それを「自助できない周辺」「正常性バイアスが働いている人たち」にどう展開していけばいいのか。高齢者に避難してもらう難しさ。誰のいうことなら聞いてくれるのか。自分の両親とのやりとりも踏まえ、とても考えさせてくれる内容でありました。

 私は建設会社の経営者なので、地域建設業の要人として、災害時は第一線にいかなければならないと思っている人種の人間です。仕事柄、災害の恐ろしさも普通の人よりは理解しているつもりです。

 そんなワタシは「自助」出来るかもしれないが、いかに「公助」してあげることが大切なのではないか。そんなことを痛感させていただきました。

 ワタシの家族は「お父さんは大雨や大雪の時には家にいない!」そんな生活がもう30年以上日常化しています。そんなことを考えると、自助以外に共助についても、私はもちろんですが、来てほしいというお願いする従業員に対しても、そんな共助を配慮すべきだと、そんなことを、とても考えさせてくれる本書でありました。

 本書の最後にこんなことが書かれていた。「公助」というハードのインフラには限界がある。しかし「自助」と「共助」には限界はない。いくらでも高みを望むことが出来る。

 私は建設屋なので、「公助」を限界までしてほしいという訳ではありませんが、「公助」があったおかげで、これくらいで済んでいる。そんな災害事例もたくさん知っているので、建設業の要人として、これから少しでもアピールしていこうと思います。(笑)

 建設業界の人、建設関係の行政の人。そしてそれをお願いする、議員さんとかにぜひ読んで欲しい1冊です。臨時収入があったら、100冊くらい購入して献本したい。そんなレベルの本書なので、まともな議員活動したい人は、読んでおくことを強くオススメします。(笑)

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